最新記事

株の基礎知識

初心者が知らない「株価が上がる」たったひとつの理由

2020年12月25日(金)14時40分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

■買いたい・売りたい、思惑は人ぞれぞれ

ここでは「儲かっている(と多くの人が考える)会社」を例に挙げましたが、株の世界で人気度が上がる理由はそれだけではありません。

AI関連やバイオ関連といった旬なテーマの企業には多くの注目が集まるため、買いたい人が増えます。つまり、株価が上がっていくと考えられます。すると、さらに買いたい人が増えて、株価はますます上がっていきます。赤字のベンチャー企業の株価が上がるのは、こういう理由からです。

他にも、ずっと業績が悪く株価も下がりっぱなしだった企業に対して、「もうこれ以上、悪くなることはないだろう」と考えて買いに回る人が増え、再び人気と株価を取り戻すこともよくあります。テレビの生放送でコケた子が人気になるなど、何がきっかけで売れるかわからないアイドルと同じです。

さらに株の場合は、過去の株価の動きを分析した結果、「この先は上がる」というシグナルが出たから買う、という人もいます。儲かっているか、人気度が上がっているか、といったこととは関係なく、単純に株価の動きのみを見て、そう判断しているのです。

すべての人の思惑を知ることはできません。でも、なんにせよ、その株を買いたい人が売りたい人より多ければ株価は上がり、買いたい人が減って売りたい人が増えれば株価は下がる。株価が上がる理由は、かくもシンプルなのです。

利益確定を忘れずに

ピンと来た株をすかさずゲット。その後、思惑どおりに株価が大きく上がったとしても、実は、まだ儲かったことにはなりません。いま持っているのは、あくまで株式。それを売却してお金に換えるまでは、購入費用を支払った分だけ財布の中身はマイナスなのです(配当金などは除く)。

「株を買ったら、いつの間にかものすごく儲かっている」と自慢する人がいますが、株は売却してはじめて利益になります。売却せず保有したままでは、気づいたときには大損になっている可能性もあります。人気化する理由も様々なように、人気が薄れる理由も様々だからです。

人がその企業をどう思っているか。その思惑で、株価は上がったり下がったりします。言い換えると、株価チャートや財務諸表を読めなくても、「人の思惑」を読むことができれば、株はそんなに難しいものではありません。

2020/06/22

[執筆者]
岡田禎子(おかだ・さちこ)
証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)【株窓アワード2019大賞】

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
kabumado_logo200new.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マレーシアGDP、第1四半期は前年比4.2%増 輸

ワールド

ニューカレドニアに治安部隊増派、仏政府が暴動鎮圧急

ビジネス

訂正-中国の生産能力と輸出、米での投資損なう可能性

ワールド

米制裁は「たわ言」、ロシアの大物実業家が批判
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中