最新記事

株の基礎知識

株式投資で「必ずやらなければいけない」本当に大切なこと

2020年8月17日(月)18時15分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

なぜ人は損を抱えてしまうのか

2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者で行動経済学者のダニエル・カーネマンが提唱した「プロスペクト理論」をご存じでしょうか。この理論が言っていることのひとつは、「人は、目の前に利益があると、それが減ることを回避しようとする」というものです。

先のAさんの場合、いったん利益が出ていたにもかかわらず、一転してマイナスになってしまいました。こういうとき、人は、最初からマイナスになった場合よりも不愉快を抱くそうです。

例えば、一度は決まっていた転職話が急に取り消しになったら......、好きな異性にプロポーズしてOKをもらえていたのに「やっぱり、ごめんなさい」と断られたら......。最初からNGだった場合よりも大きな心のダメージを受けることは理解できますよね。

そしてAさんのように、ぐずぐずと未練が残り、諦めきれずに引きずってしまいます。何とかして、当初得られていたはずの利益を取り戻したくて、損失が広がることには目をつぶり、そのまま株を持ち続けてしまいます。

そうこうしているうちに株価はさらに下がってしまい、もはやどうでもよくなって塩漬け株へ......。本来であれば、株価が下がれば下がるほど損は大きくなり、自分の大事なお金が減ってしまうはずなのに、だんだん損に対して鈍感になってしまうのです。

とくに株を始めた当初は、少しでも利益が出たことがうれしくて、マイナスに転じてからも「戻るはず」という期待から、なかなか株を手放すことができません。そうして塩漬け株だけが手元に残り、株式投資からも足が遠のいてしまいがちなのです。

本当に大切な「損切り」の話

人はかくも感情的な生き物で、なかなか損失を受け入れることができません。本来なら、期待外れで損が出た場合は、さっさと売却して損を確定してしまったほうが手持ち資金のダメージは少なくなります。さらにそれを他の株に回せば、お金を無駄なく上手に増やすことができるはずなのです。

損になった株はさっさと手放して損を確定する──これを「損切り」と言います。塩漬けとは対照的に、株式投資で「必ずやらなければいけないこと」のひとつです。

再びAさんにご登場願いましょう。AさんはG社株に10万円(株価1,000円×100株)の投資をしました。その後、株価は1,500円まで上昇しましたが、もっと上がることを期待したAさんは株を持ち続けます。しかし、その期待に反して株価は900円まで下落。

もしこのときAさんが損切りしていたら、どうなっていたでしょうか。

【関連記事】金融庁も激怒した、日本の投資信託のイケてなさ

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中