最新記事

キャリア

中途採用者の能力をすばやく発揮させる手法「オンボーディング」とは何か

2019年5月17日(金)16時30分
徳谷 智史 : エッグフォワード 代表取締役 *東洋経済オンラインからの転載

例えば2週間~1カ月ほど人事が新入社員を預かって集合研修をするだけではなく、現場配属後の戦力になるまでの立ち上がりについて、より戦略的に支援していくことがオンボーディングの真髄である。とくに中途採用の場合は、新卒入社に比べて集合研修の機会が圧倒的に少ないため、現場での立ち上がり支援は緻密な設計が必要だ。

中途採用社員が入社直後の立ち上がり時期につまずきやすいのは、前職のやり方を引きずってしまうことも原因の1つである。過去の成功パターンにとらわれてしまい、今の組織風土に合わずに空回りしたり、新しい仕事に必要なスキルのギャップに気づかず苦労したりする場合がある。

中途採用は即戦力と捉えられることは多いが、組織が変われば100%同じやり方というわけにはいかない。それにもかかわらず、中途採用であっても「何かしらの未経験者」という意識はほとんど持たれていない。

中途採用だからと仕事を丸投げしていると、本人が前職との違いに気づけないまま気持ちだけが焦って孤立しかねない。「わかっているでしょ?」とはしょってしまうのではなく、組織風土や仕事の手順などを言葉にして伝え、新しくチームに加わったメンバーとして共通認識を持ってもらうことが必要だ。

まずは、入社6カ月後の姿を描く

では、オンボーディングの正しいやり方とはどのようなものだろうか。もちろん、その人の性格や価値観、備わっているスキルなどに応じてやり方は変えていくべきで、万人に同じ方法が通用するわけではない。しかし、そこには一定の傾向が見て取れる。

1つの目安としてほしいのは入社半年という期間だ。職種や業種によって多少の違いはあるが、おおむね入社6カ月の時点で何かしらの形で組織に貢献できているかどうかが、大きな分岐点となる。この時点で自己効力感(自分が外部からの要請にきちんと対応しているという確信)が得られていない人は、早期に離職してしまう確率が高い。

こういった人は、本人の適性と仕事が合っていないケースもあるが、「いつまでに何をどれくらいできるようになればいいか」といった成長の目標が示されていないために、先輩や優秀な同僚とのギャップに自信をなくしている場合が多い。また、目指すべきゴールは示されていても、ゴールに到達するためのステップが組織の方針とずれているケースもある。

さらに、立ち上がりを伴走していくうえでは、「仕事の成果」だけでなく、「自己実現度」という尺度で支援していくことも大切だ。入社してきた以上、「こんな仕事を手がけてみたい」「こんな人になりたい」といった何かしらの目的があるはずだ。

どんなに高い成果を出せる人でも、自己実現につながらなければモチベーションは下がり、全力で仕事に取り組めなくなってしまう。これではせっかく優秀な人材を採用したにもかかわらず、チームにプラスのシナジーを生み出すことはできない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英シェル株主は気候対策強化案に反対を、グラスルイス

ワールド

中国主席、5年ぶり訪欧開始 中仏関係「国際社会のモ

ワールド

ガザ休戦交渉難航、ハマス代表団がカイロ離れる 7日

ワールド

米、イスラエルへ弾薬供与停止 戦闘開始後初=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中