最新記事

権力

社会をよりよく変えるために「権力」を使おう──その前に3つの誤解とは?

POWER, FOR ALL

2022年7月6日(水)12時58分
ジュリー・バッティラーナ(ハーバード大学ビジネススクール教授)、ティチアナ・カシアロ(トロント大学ロットマン経営大学院教授)
ハーバード大学

ハーバード大学ビジネススクールをはじめ世界のMBAで権力の授業が人気 BROOKS KRAFT LLCーCORBIS/GETTY IMAGES

<国際社会から非難を浴びても他国への侵攻をやめない独裁者は、どのように「権力」を握ったのか? 実は「権力」は誰も所有することができないが、4つの戦略で誰でも使いこなすことができる。ハーバード・ビジネススクール人気講座より>

国際社会の批判を受けても独裁的な政権は侵攻をやめず、各国で分断をあおる政治が台頭し、先進国で経済格差が拡大するなか、誰しもこんな疑問が浮かぶ──なぜ強大な力を握る者がいるのか。彼らの支配は続くのか。力関係を覆すことはできないのか。

今、世界のビジネスパーソンがこぞって学び、名門ビジネススクールで人気を集めているのが、権力(パワー)の授業だ。

長年このテーマで教鞭を執ってきたハーバード大学ビジネススクール教授のジュリー・バッティラーナとトロント大学ロットマン経営大学院教授のティチアナ・カシアロは、講義録を話題の新刊『ハーバード大学MBA発 世界を変える「権力」の授業』(邦訳・CCCメディアハウス)にまとめた。

パワーとは国家権力や経営トップなど一部の人だけのものではない。他者に影響を及ぼし、社会を変えられるパワーの仕組みを知れば、ビジネスから人付き合いまで多くの場面で、誰もがうまく使いこなせるはずだ。以下に本書の抜粋を紹介する。

◇ ◇ ◇


パワーをめぐる誤解

毎年秋になると、ハーバード大学とトロント大学で筆者らの授業を受講する学生から、同じような質問が寄せられる。

パワーを手に入れ、それを維持するコツは? 昇進を果たしたのにパワーを実感できないのはなぜか? どうしたら周囲の人を変えられるのだろう? パワハラ上司に抵抗できない理由は? 自分がパワーを手にしたとき、それを乱用していないか確認する方法は?

多くの人に共通しているのは、パワーをめぐる根深い誤解だ。なかでも特に3種類の誤解が、パワーを正しく理解し、最終的にその力を適切に行使するという目標達成の妨げになっている。

1つ目の誤解は「パワーは所有できるものであり、一部の恵まれた人にはパワーを獲得する特殊能力が備わっている」という信念だ。この理屈でいけば、そうした特殊能力を有しているか、何らかの方法でその力を獲得できた人だけがパワーを保持できることになる。

だが、あなた自身の人間関係を振り返ってみれば、自分の性質や能力は変わらないのに、思いどおりに動かしやすい相手とそうでもない相手がいることに気付くのではないか。

2つ目の誤解は「パワーは地位によって決まり、国王や女王、大統領や将校、取締役やCEO、富裕層や有名人のために用意されたものだ」という発想だ。職権や階級をパワーと同一視する勘違いは極めてよくある誤解であり、われわれは毎年、初回の授業でこの問題にぶつかる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バイデン氏のガザ危機対応、民主党有権者の約半数が「

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中