最新記事

自動車

「ソニーEVは人が乗れる巨大aibo」 自動車の再定義に既存メーカーも注視

2022年1月14日(金)11時00分

アナリストとして自動車業界の変遷を見てきたナカニシ自動車産業リサーチ代表の中西孝樹氏は、ソニーが売ろうとしているのは車ではなく、人の移動に関連したサービスを統合するMaaS(マース:Mobility as a Service)に近いものと指摘する。

「(ネットワークに)接続された端末が移動体として、それは大きなアイボのようなものかもしれないが、サービスを提供する。ソニーはあの試作車を売りたいのではなく、(エンターテイメントの提供などで、新たな)顧客体験価値を作り、新しい課金システムでビジネスとして成立させていくのではないか」と、中西氏は話す。

市場調査会社の米マーケッツアンドマーケッツは、マースの市場規模が昨年の約30億ドルから2030年までに400億ドルに拡大すると予測している。

ダイソンの蹉跌

異業種からの参入組がEVの生産自体で成功するのは容易ではない。掃除機などの家電で培ったモーター技術で挑んだダイソンは、2年かけて研究開発を重ねた結果、2019年に断念することを発表した。創業者のジェームス・ダイソン氏は「開発過程を通して多大な努力を重ねたが、採算が取れるようにする方法を見い出せない」と社内に説明した。

日本の大手電機メーカーの関係者は「(EV車を)作れないことはないが、各国で異なる安全に関する多くの法律を、新規参入組が自ら、すべてをクリアしていくのは相当困難だ」と語る。

ソニーはどう車両を開発・生産するのかまだ明らかにしていない。しかし、狙いが自動車生産そのものではないとの見方は中西氏以外の専門家からも挙がっており、迎え撃つ自動車メーカーには競合することの不安だけでなく、期待ももたらしているようだ。

EV市場動向に詳しいデロイトトーマツグループのディレクター、柴田信宏氏は「異業種ゆえに、既存の自動車の概念にとらわれない、全く新しい付加価値のある車を出してくるかもしれないという興味が、自動車業界内にはある」と語る。「成熟した自動車市場をブレークスルーする期待値もあるということで、既存メーカーは注視しているのだろう」

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、リチウム電池生産能力の拡大抑制へ 国際市場の

ワールド

台湾輸出、4月は予想下回る前年比+4.3% 対米輸

ワールド

ラファ市東部でイスラエル軍と戦闘中=ハマス

ワールド

スウェーデン中銀、8年ぶり利下げ 年内さらに2回見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中