最新記事

働き方

理想の生活と未来の成功のため、今こそ「損して得とれ」の精神を大切に

Tipping the Work-Life Balance

2021年10月15日(金)11時58分
ドリー・クラーク(デューク大学フクア経営大学院客員教授)

211019p50_wlb02.jpg

C.J. BURTON/GETTY IMAGES

コロラド州の小さな町に住むアンマリー・ニールは、もう25年以上、自分にとって理想の暮らしを追求してきた。人事部門のエグゼクティブとしては、ニューヨークやサンフランシスコ、あるいはダラスやシカゴなどのビジネスの中心地に住んだほうがずっと楽だったはずだ。

だが、ニールは州都デンバーからも1時間近く離れた町に住んでいる。「コロラドの価値観とライフスタイルが大好きになったから」と彼女は言う。「山々が私の魂にエネルギーをくれる」。国際企業の人事部長など好条件のポジションを提示されても、彼女の決意は揺るがなかった。

その選択は結果的に、ニールのキャリアにもプラスに働いてきた。彼女は米通信機器大手シスコシステムズで、5年にわたり最高人材責任者を務めたほか、現在はプライベートエクイティ大手の人材部門トップに就いている。

「最高のアイデアは長い散歩や3.5キロの水泳中に浮かぶかもしれない」とニールは言う。「本当の仕事が起こるのは、会社のデスクではない」

とはいえ、それは既に一定の成功を収めているからできる働き方であって、若手ビジネスパーソンには無理という声もあるかもしれない。だが若手でも、小さな選択を積み重ねて理想のライスタイルに近づくことはできる。

カメラマンのノストランドは「最高のフリーランスライフ」を送るために、「無料で帰省できる仕事」だけでなく、さまざまな形の報酬を受け入れている。「モノでの支払い」もその1つだ。

高級ウール製品の販売業者の依頼で仕事をしたときは、撮影料が1枚500ドル超のところ、「1枚800ドルもするモンゴル製高級スカーフ」で支払ってもらった。「うちのソファに大きなのが1枚ある」と、彼は言う。「寒くなったら身に着ける分もあるし、妹にも1枚プレゼントした」

ブルックリンのメキシコ料理店がウェブサイト用の写真撮影を依頼してきたときは、1200ドルの撮影料を、現金800ドルと、そのレストランで飲食できるクーポン400ドル分で支払ってもらった。「こういう交換は大歓迎だ。相手にもほとんど負担はない」と、ノストランドは言う。

彼は高級ファッションと素敵な食事が彩る、手に入らなかったはずのライフスタイルを、柔軟性と創造力でつくり上げている。望む人生は追い求めれば実現できる。

■キャリアのゴールに向かって動く

「ワーク」と「ライフ」を区別しなかったら? 2つをミックスして、双方を充実させることができたら?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中