最新記事

テクノロジー

グーグルのOS侵攻作戦

2009年8月18日(火)16時16分
ニック・サマーズ

 グーグルは7月7日、グーグル・アップスのメールや文書作成ソフトから「ベータ版」の表示を外した。試作版のイメージを脱して企業に採用を促すのが大きな狙いだ。シルバーは、マイクロソフトの優位は当面、揺らがないとみる。「経営トップがクローム搭載のネットブックを持ってきて、『これでメールを使いたい』と言う日が来るまで企業は動かない」

 ネットブックの売り上げはパソコン全体のなかではまだごくわずかだが、業界では期待の星だ。ハイテク調査会社のアイサプライによると、パソコンの09年の世界出荷台数が全体では前年比9.5%減になるなか、ネットブックは68.5%増加する見込み。また今年のパソコン販売台数1億3400万台のうち、ネットブックは2200万台に達すると予測する。

「クラウド」を睨んだ攻防

 アメリカでのネットブックやクロームOSの普及に1つ制約要因があるとすれば、無線でネット接続するためのインフラ整備が追いつかないことだ。「今の市場に欠けているのは、いつでもどこでもネットに接続できる環境だ」と、IT専門調査会社IDCのアナリスト、リチャード・シムは言う。

 だがグーグルには、巨額のキャッシュと頭脳という強みがある。マイクロソフトと違ってユーザーにも好かれている。

 何よりグーグルは、ユーザーのデータも応用ソフトもネットワーク上にあって、どこからでもアクセスできる機能分散型の「クラウド・コンピューティング」の未来に賭けている。一方のマイクロソフトは、すべての機能をパソコン内のOSと応用ソフトに集中させたパソコン依存型のモデルに利益の大半を依存する。

 技術革新の大勢はグーグルが目指す未来に向っており、結果としてマイクロソフト的なパソコンの使い方が崩壊することも大いにあり得る。だが、爆弾に火が付くにはまだ時間がかかりそうだ。

[2009年7月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中