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世界経済中国がまだドル離れできない理由
金保有や人民元による貿易決済を増やしてドルの追い落としを図る北京の本当の実力
中国は米ドルを世界の準備通貨の座から追い落とすことを目指しており、間もなくそれが実現するかもしれないとの説がある。
中国人民銀行の周小川(チョウ・シアオチョアン)総裁は3月、「超主権準備通貨」の創設を提唱した。ドルへの明確な言及は避けたが、ドルが標的であることは間違いない。40年代以来、ドルはほとんどの貿易および金融取引の勘定単位となり、おかげでアメリカは財政と影響力において特権を得た。その地位を失えば、アメリカの威信は失墜し、代わって中国が台頭することになるだろう。
中国は超主権準備通貨構想に続き、ベラルーシやブラジルなどとの貿易の決済通貨としてドルの代わりに人民元を使う動きを見せている。そのほか英経済紙フィナンシャル・タイムズのいう「ドル離れ」の一環として、過去5年間で金保有高を2倍に増やした。
GDPはまだアメリカの半分
一連の動きに一部の中国専門家は神経をとがらせている。アメリカは「まったく打つ手がない」と、中国経済の専門家である米ピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラーディーは結論付けた。ニューヨーク大学のヌリール・ルビーニ教授も、アメリカが「財政を正常化」しなければ、10年以内に「台頭する中国と人民元が支配する」アジアの世紀が始まると警告する。
とはいえドルの支配はすぐには終わらない。ドルが準備通貨でいられるのは惰性だけでなく米市場の強い吸引力のおかげでもある。GDPではアメリカはいまだに中国の2倍以上、貿易額は中国を50%上回る。中国がいつ追い付くか(追い付くかどうかも)誰にも分からない。5年後という説もあれば、30年かかるという説もある。
ドルに対抗する最近の中国の動きは実際はかなり控えめだった。ベラルーシやアルゼンチンやマレーシアなどと結んだ「通貨スワップ協定」は大いに注目された。その目的は2国間貿易をドルではなく両国の通貨で決済することだ。しかし08年の世界貿易総額19兆5000億ドルに対し、中国の通貨スワップの総額は950億ドルにすぎない。
2020年には人民元が準備通貨に
金保有高が過去5年間で2倍になったといっても、それがドル離れを示しているわけではない。外貨準備高はこの5年間で10倍に増えたが、そのうち金が占める割合は2%に減っている。中国政府は実際には金離れしているのだ。
ドルはもうしばらく準備通貨の座にとどまると中国当局者は認める(国家外為管理局のトップは最近、人民元が準備通貨になる時期は2020年だろうと語った)。
それに中国の場合、現状を変えたいという欲求は現状を維持したい本能と入り交じっている。政治的影響力を持つ中国の輸出部門が繁栄し続けるには、強いドルを維持するのが一番なのだ。
[2009年6月10日号掲載]