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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
アルジェリアの「BPプラント人質事件」に距離を置くアメリカ
ほぼ最悪の事態となったというニュアンスの報道が続いていますが、状況はまだまだ流動的なようです。そんな中、アメリカのメディアも世論も、この事件には異様に冷静と言いますか、距離を置いています。その背景に関して、現時点での見方を箇条書きでお伝えしておこうと思います。
(1)20日のオバマ大統領の2期目の就任式、そして翌21日の大統領スピーチ、就任記念コンサートとこの日が「キング牧師誕生日」であることからの祝賀行事、これがアメリカの最大の関心事です。アルジェリアの事件に関しては、メディアも世論もどうしても距離を置きがちになっています。
(2)特にオバマ政権が冷静なのは、ここで「ジタバタ」することはできないという事情です。野党共和党の保守派には、「そもそもアラブの春を支持したのは間違い」であるとか「カダフィ打倒の際に支援した反政府運動にはテロリストが混じっていた」という問題を材料に、オバマ政権を糾弾しようという動きがあるからです。
(3)その共和党の「ターゲット」となっているのは「ベンガジ事件」です。米大使館が襲撃されて大使以下の米国人が暗殺された事件が「北アフリカでのアルカイダの活性化」の証拠であり、アメリカは断固これと対決すべきだ、オバマが「アラブの春」を支持したのは生ぬるいというのです。
(4)特に共和党は「アルカイダ」の犯行である「ベンガジ事件」のことを「ムハンマド冒涜映画に抗議した反米デモの一環」だという「危機感のない自己卑下的な」理解をしたとして、猛烈なキャンペーンを張りました。このためにスーザン・ライス国連大使は次期国務長官の目がなくなり、ヒラリー自身も非難の対象になっています。
(5)では、共和党自身は「マリのアルカイダ」との全面対決を覚悟しているのかというと、必ずしもそうではないのです。「アラブの春」を支持したオバマには批判的であり、特にリビアの反カダフィ勢力のことは疑っており、今回の事件にも強い危機感を持っているのは事実です。ですが、財政危機ということ、国民の間に厭戦気分が濃厚なことから共和党にしても「北アフリカのアルカイダ」との全面対決は望んでいないようです。
(6)共和党ですが、ロムニーで敗北した後、2016年へ向けて名前の上がる「大統領候補」としては、「軍事外交タカ派」の名前は絶無です。例えば今日現在の国民的人気の高いクリス・クリスティ知事(ニュージャージー州)も、政府の肥大化との対決や個人的なのリーダーシップ上でのキャラクターが売り物であり、軍事や外交に関してはほぼ経験はゼロという具合です。
(7)オバマ政権の場合は、立場はもっと難しいのです。例えばアルジェリアというのは、苦しい独立闘争と内戦を経て「穏健イスラム+堅実な経済成長+西側との適度な距離感+テロへの毅然とした姿勢」という「微妙な均衡」にあったわけです。これは、そのまま「エジプトのモルシ政権が当面目指してほしい方向性」と重なってきます。アルジェリアの政府が混乱するとか、アメリカがアルジェリアの内政に干渉するというのは、そのままエジプトの混乱、リビアの混乱という形で北アフリカ全体を流動化させる危険があるわけです。同じ理由で、マリへの米軍の直接的な介入にも慎重です。
(8)そうは言っても、事件の全容が明らかになればアメリカとしては動かざるを得ないでしょう。但し、仮に国防長官にチャック・ヘーゲル元下院議員(共和党)という「中東での軍事介入消極派」の就任が承認された場合は、正規軍の大規模投入ということは無さそうです。その代わりに、ブレナン新CIA長官と手を組んで「正規軍投入ではない形の隠密作戦」で色々と「対策」を講じてくる可能性はあります。
(9)1つの可能性としては、ヒラリーが健康問題を払拭し、「ベンガジ事件」での共和党の追及もかわして、徐々に「2016年へ向けての大統領候補」として存在感が出てきた場合です。その場合はヒラリーは、この「北アフリカのアルカイダ」との対決を主張して存在感を高めるような動きになるかもしれません。彼女は、オバマの忠実な部下として振る舞っていましたが、ホンネの部分では、イスラエルを冷遇し過ぎる点や、「アラブの春」支持における先見性の無さという点で、オバマの手法には完全に賛同していなかったフシがあるからです。
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