Picture Power

ガーナをむしばむデジタル機器の「墓場」

Digital Dump

Photographs by Pieter Hugo

電子機器の廃棄物の集積所では焼け残ったパソコンの部品があちこちに残っている

 ガーナの首都アクラ郊外にあるスラム、アゴグブロシは電子機器の墓場だ。パソコンのマザーボード、モニター、ハードディスクなどが燃やされ、黒煙と悪臭が一帯を覆う。住民が、聖書に出てくる火で滅ぼされた都市にちなんで「ソドムとゴモラ」と呼ぶのも納得できる。

 絶望的な景色の裏には皮肉がある。過去数十年の間、欧米諸国は西アフリカの途上国を支援する目的で次々とパソコンを寄付したが、結局それが逆効果になった。寄付の名目で、欧米で要らなくなった電子機器の廃棄物がどんどん送られるようになり、村々には壊れて使いものにならない廃棄物があふれ返った。多くの地域がそうした廃棄物のごみ箱と化した。貧しい人々は廃棄物を燃やし、そこから出る有害物質にさらされながらも銅など金属を抽出する「宝探し」を行う。

 国連環境計画の試算によれば、毎年5000万トン以上の電化製品が廃棄処分になっている。しかし、例えばヨーロッパだけを見ても、こうした廃棄物のうちリサイクルされるのは25%にすぎない。廃棄物の処理については各国政府が規制を行っているが、寄付だと規制の対象になりにくいという現実がある。業者にとって寄付が手っ取り早い廃棄手段になっている。ただ、被害を受けているのはガーナの人たちばかりではない。米国務省は、ガーナに行き着いたパソコンのハードディスクから個人情報を盗む犯罪が横行していると報告している。そうした犯罪によって結局、欧米諸国の人々も被害者となっている。

 南アフリカ生まれの写真家ピーター・ヒューゴは、1年近くかけて「デジタル災害」の現場を記録した。彼の作品は、人類をさらに賢く、速く変化させた情報技術革命の負の側面を生々しく描き出している。

 写真集「Permanent Error」

PHOTOGRAPHS BY PIETER HUGO--YOSSI MILO GALLERY, NEW YORK

 【2011年8月24日号掲載】

MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 2
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 3
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将来の「和解は考えられない」と伝記作家が断言
  • 4
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 5
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    原作の「改変」が見事に成功したドラマ『SHOGUN 将軍…
  • 10
    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 9
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 5
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 6
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 9
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 10
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中