Picture Power

震災が切り裂いたラクイラの暮らし

New Town After the Quake

Photographs by R. Rorandelli & M. Morzoni

震災が切り裂いたラクイラの暮らし

New Town After the Quake

Photographs by R. Rorandelli & M. Morzoni

ラクイラ:震災で被害を受けた市街地(写真左側)と郊外に建設された被災者住宅(写真右側) ROCCO RORANDELLI—TERRAPROJECT

 今年5月のカンヌ国際映画祭で、イタリアの女性監督サビーナ・グッツァンティのドキュメンタリー『ドラクイラ----イタリアは震える』が特別上映された。昨年4月にイタリア中部ラクイラで発生した大地震を取り上げた作品だ。復興は遅々として進まず、倒壊の危険がある建物には市民が足を踏み入れることもできない----。政府の対応を厳しく批判し、喝采を浴びた。

 実際、震災から1年が過ぎた今でもラクイラの中心部は瓦礫で埋まり、立ち入り禁止になっている。政府は街の郊外に4400棟の集合住宅を建設し、約1万5000人の住民を収容している。しかし住民は「街のコミュニティーが分断され、ばらばらになってしまった」と嘆いている。

 イタリアには震災で壊滅した旧市街を放棄し、新しい街を建設した前例がある。南部のコンツァ・デッラ・カンパーニアでは、1980年に発生した大地震で8割以上の建物が倒壊した。住民は新しい街に転居し、旧市街は博物館へと姿を変えた。

 ラクイラの場合、政府は旧市街を放棄せずに復興する方針でいるが、かつての姿を取り戻すまでには10〜15年の歳月がかかるとみられている。住民の嘆きは当分収まりそうもない。

2010年7月14日号掲載

MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中