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Picture Power
アメリカ国境に広がる過酷で非情な世界
Photographs by RICHARD MISRACH
アメリカ国境に広がる過酷で非情な世界
Photographs by RICHARD MISRACH
アメリカとメキシコとの国境に壁を造れ。費用はメキシコに負担させろ――。米大統領選の共和党候補者指名レースで首位を走るドナルド・トランプの暴言で、国境と不法移民の問題が今また注目を集めている。
カリフォルニア生まれの写真家リチャード・ミズラックは04年から、3141キロに及ぶメキシコ国境地帯を撮影し続けてきた。時に大判カメラ、時にiPhoneを使い、国境フェンスのある風景や不法移民の持ち物の残骸、周辺の過酷な環境などを写し出し、写真集『ボーダー・カントス』にまとめた。
ミズラックはこの写真集でメキシコ出身の作曲家ギレルモ・ガリンドとの一風変わったコラボレーションも試みている。国境付近で手に入れた衣服やボトル、タイヤなど、移民や国境警備隊が残したがらくたで、ガリンドが楽器を制作。そこから生み出される独特の音色によって、視覚と聴覚の両面で国境を表現しようという狙いだ。
写真と音楽から見え、聞こえてくるのは、移民と国境管理という重大な国際問題だ。荒涼とした国境地帯を写し出した試みは、トランプのわめき声以上に現実を雄弁に語る。
撮影:リチャード・ミズラック
1949年、米ロサンゼルス生まれ。同世代の中で最も影響力の大きい写真家の1人。人間の侵入によって破壊され変容したアメリカ南西部の砂漠を記録した『デザート・カントス』など多数の著作がある。本作は最新写真集『ボーダー・カントス』(米アパチャー社刊)からの抜粋
Photographs from "Border Cantos" (Aperture) by ©Richard Misrach. Courtesy Fraenkel Gallery, Pace/MacGill Gallery, and Marc Selwyn Fine Art; Instruments by ©Guillermo Galindo and Richard Misrach
<本誌2016年5月17日号掲載>
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