Picture Power

【年末写真集特集3】アフガンを塗り潰した戦乱の日常

PORTRAITS OF WAR

Photographs by Larry Towell

【年末写真集特集3】アフガンを塗り潰した戦乱の日常

PORTRAITS OF WAR

Photographs by Larry Towell

侵攻時にソ連軍が残していった品々(左)、タウェルは08~11年にわたってアフガニスタンの姿を捉えた

 アフガニスタンと聞いて多くの人が思い浮かべるのは「戦争」のイメージ。実際、この国では1979年からのソ連による侵攻とその後の内戦、タリバンの国土制圧、9・11後の米軍による侵攻など常に激しい戦闘が繰り広げられてきた。

 戦乱の時代はこの国をどう変えてしまったのか。長年、戦場カメラマンとして活躍してきたラリー・タウェルは、30年以上に及ぶ日常的な戦闘が市民や風景に与えた影響を追った。写真に収められたのは、人々が必死で生き延び、流浪し、多くのものを失い、それでも何とか心身を癒やそうとする姿だ。

 軍事基地から一般家庭まで、タウェルはさまざまな場所で米軍兵士や地雷の犠牲者、街中に放置された兵器などにカメラを向け続けた。そこからは、歴史や民族同士の不満に深く根差した紛争の複雑さと、それが日常の一部となっている人々の厳しい環境が伝わってくる。
「アフガニスタンで起きていることを理解し、何かしらの意見を持つためには、この国の歴史をより深く知ることが大切だった」と、タウェルは言う。

 いずれこの国にも平穏が訪れるかもしれない。それでも、現在の戦乱は新たな歴史として刻み込まれることになる。

Photographs from "Afghanistan" (Aperture) by Larry Towell

<本誌2014年10月21日号掲載>

写真集「アフガニスタン」


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