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無人戦闘機に狙われる恐怖
Photographs by Tomas van Houtryve
無人戦闘機に狙われる恐怖
Photographs by Tomas van Houtryve
12年10月、パキスタン北東部でオクラを摘んでいた67歳の女性が、アメリカによる無人機攻撃の犠牲になり亡くなった。翌年、ワシントンの議会で、殺害された女性の13歳の孫息子はこう語った。「僕はもう、青く澄んだ空が好きではなくなった」。彼もあの空爆で飛んできた金属片によって負傷していた。「今は曇り空が好きだ。曇りだと無人機は飛んでこないから」
この言葉に大きな衝撃を受けたのが、フォトジャーナリストのトマス・バン・ハウトレイベだ。第二次大戦にしろベトナム戦争にしろ、これまでアメリカが戦ってきた戦争では報道写真が大きな役割を果たした。米国民に戦争の実態をさらけ出し、議論を促した。なのに現在のテロとの戦いでは人々が置き去りにされたまま。視覚的イメージがないために、無人機攻撃の是非については議論が深まらない。バン・ハウトレイベはこの視覚的ギャップを埋めようと、アマゾン・ドットコムで小さなヘリコプターを購入。これにカメラと地上へ映像を送信するシステムを搭載して超小型無人機を作り、アメリカ各地で撮影した。被写体に選んだのは、米無人機が対テロ戦でよく標的とする結婚式や葬式、教会など。つまり、多くの人々が集まる場だ。
そんなところを空爆すれば、罪のない民間人が巻き添えになるのは避けられない。昨年10月に国連が発表した調査結果によれば、04年以降、パキスタンとアフガニスタン、イエメンの3カ国で無人機攻撃の犠牲になった民間人は約480人に上った。オバマ政権による無人機政策が国際法に触れる可能性も指摘されている。バン・ハウトレイベの無人機カメラには、こうした現状を「視覚化」し、政権に対して無人機攻撃に関する情報開示や透明性を求める狙いがあった。
彼はまた、アメリカ国内の刑務所や油田、メキシコとの国境など、攻撃目的ではなく監視用に無人機が使われている場所も撮影した。「FBIが国境で無人機を飛ばし、私たちを監視下に置いていることなど誰も知らない」と、彼は言う。始まりは「見えない戦争」に対する問題提起だったが、政府に「のぞかれるプライバシー」にも危機感を募らせるようになった。
無人機というテクノロジーの一番の怖さは、バン・ハウトレイベのこの言葉に集約されているだろう。「無人機は人間同士の関係を断絶する。生身の人間が画面上に映るただの影になってしまうのだ」
Photographs by Tomas van Houtryve-VII
<本誌2014年7月22日号掲載>
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