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ヴェネツィア・ビエンナーレとは何か(1):水の都に集まる紳士と淑女
ヴェネツィア・ビエンナーレ2011、日本パビリオンのレセプションパーティ (photo by Hiroko Ozaki)
■水の都に集まる紳士と淑女
「現代アートを知りたいと思ったら、まずヴェネツィアに行けばよい」とよく言われる。僕も学生や知り合いにそう言うことがある。1895年以来の伝統を誇る、最も格が高いアートの祭典。各国の最先端アートが並んだショーケースだから作品のレベルは高く、いまのトレンドがひと目でわかる。世界中からアート好きが来ていて国際的で華やか。世界屈指の観光地だから歩いているだけで楽しい。特に、一般公開前に特別招待客やプレスのみを対象に開かれるオープニングプレビューは一見の価値がある。
ここ数回は展示をゆっくり観て回れる時期に行くようにしているけれど、アート雑誌を作っていたころは、僕も欠かさずにプレビューに足を運んだ。物故作家以外、参加アーティストは全員そこにいる。ビエンナーレのディレクターはもちろん、各国パビリオンのキュレーターも勢揃いし、有力美術館の館長やスタッフも大勢集まっている。だから取材や情報収集にはこの上なく便利である一方、ゆっくり展示を観ることができない。あちらこちらで「久しぶり、元気?」と引き留められるし、広い会場を歩き回った後、夜は数え切れないほどのパーティがあるから、身も心も(足も胃袋も)疲れ切ってしまう。
でも、現代アートの作品だけではなく、いまの現代アートを成立させているシステムやメカニズムを知りたければ、どうにかしてプレビューに行くことをおすすめする。シャンペンが無料で飲めるからではない。当のシステムやメカニズムを作り出し、実際に動かしている人々がほとんど集まっているからだ。あらためて言うまでもなく、上に挙げたアートワールドのVIPたちのことである。
■アート界のオリンピック
ヴェネツィア・ビエンナーレ(以下、ビエンナーレ)は、アート界のオリンピックとかワールドカップと呼ばれることがある。ジャルディーニ(ヴェネツィア最大の公園)とアルセナーレ(ヴェネツィア共和国時代の国立造船所)のふたつの主会場を中心に、各国パビリオンが金獅子賞を狙って争うことから付けられた異名だ。ではIOCやFIFAのような存在はあるのかといえば、強いて言えばビエンナーレ財団という主催者がそれに当たる。と言っても、各国に財団の下部組織があるわけではなく、IOC ともFIFAともだいぶ違う。財団の幹部が、IOC の幹部のように辞任させられたり、FIFAの幹部のように逮捕されたりすることはまずないだろう。ビエンナーレの関係者が法にもとる行為を行うことは、構造的にほぼあり得ないからだ。
この筆者のコラム
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