コラム

中国SNS最新事情 微信(WeChat)オフィシャルアカウントは苦労の連続!

2017年06月02日(金)15時50分

オフィシャルアカウントが発信した投稿や情報、記事が面白いと感じたら、一般ユーザーは「投げ銭」という形で、お金を出すことで賛意を表明することができる。逆にオフィシャルアカウント側からは、一般ユーザーに「お年玉」を贈ることが可能だ。

ほとんどの場合で10円、20円というごくごく小額のお金が動くだけなのだが、実際のお金をやりとりすることで有名人と一般ユーザーの距離は縮まっていく。商売気が強い中国人ならではのサービスと言えるかもしれない。

【参考記事】熊本地震に寄せられた中国人の温かい言葉(とお金)

私はありがたいことに中国でそれなりの知名度を持っている。微博で発信すれば大きな反響を呼び起こすことができるし、今でも大事なツールとして活用している(フォロワー数は現在、21万2000人強)。だがファンとより密接な関わりを持ちたい、そのためには微信オフィシャルアカウントを開設したいと考えるようになった。

ところが、この微信オフィシャルアカウントの開設がともかく面倒なのだ。この半年ほどはさらに規制が強化され、お取り潰しを受けた有力アカウントも存在するほどである。私は最近、中国・北京市に法人を設立したのだが、微信オフィシャルアカウント作りのためという意味もある。長い審査を経てこの4月にようやくアカウントが開通した。

規制は厳しく、投稿はすべて運営元にチェックされる

運営もひと苦労である。投稿(情報の発信)にいちいち運営元のチェックが入るのだ。私は主として過去に書いたコラムや出演したテレビ番組の映像を配信しているのだが、チェックにあたり最初に掲載された新聞社やテレビ局から運営元に転載許可の連絡をしてもらう必要がある。テレビ番組はともかく、コラムは私が著作権を持っているというのに不思議な話だ。

これほど規制が強化されたのはここ半年~1年の話だと聞く。習近平政権はインターネット、とりわけSNSが持つ可能性をはっきりと認識している。微博の規制強化は後手後手に回ったが、微信については問題が大きくなる前に対策を強化したということだろう。

風の噂では習近平総書記の娘、習明澤氏はネットに詳しく、父親にアドバイスしているというが......。

ともあれ、私の微信オフィシャルアカウントが開通して約1カ月、反応は上々だ。微博とは違うファンとの強い絆、インタラクティブな交流ができるようになった。

今、中国のニューメディア業界、マーケティング業界では微信の注目度は微博をはるかに上回っている。日本の観光庁や地方自治体はいまだに微博中心の宣伝で中国人観光客の誘致を図っており、日本企業も一部では微信の活用が始まっているとはいえ、まだまだ足取りは鈍い。

中国市場攻略には一刻も早く微信の活用を考えるべきだ。オフィシャルアカウント開設には高いハードルがあるとはいえ、乗り越えられない壁ではない。もしどうしてもヒントが欲しいというのならば......新宿歌舞伎町の湖南菜館にいる私を訪ねてきてほしい。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story