コラム

新宿案内人が14年も続けたコラムを休載する理由

2018年12月20日(木)20時55分

街角で会いましょう!(ゴミ拾いボランティアNPOグリーンバードの活動に参加する筆者) 写真提供:筆者

<自分が「主演」するドキュメンタリー映画の上映に通い続けて、大きな発見があった。2015年の新宿区議選で私が立候補したときに投票してくれた人、東京で在日外国人と関わり合って暮らす人......。そんな人たちの生の声を聞く機会を得られたのだ。そして私は14年間続けてきたこのコラムをいったん休載する>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

3年前の私の選挙戦を取材したケイヒ監督のドキュメンタリー映画『選挙に出たい』の上映が、東京中野区のポレポレ東中野で続いている。東京の公開は12月21日まで、1月からは横浜、名古屋、京都、大阪の各都市で上映が始まる。東中野ではほぼ毎日、上映が終わった後にスクリーンの前に立って観客のみなさんに挨拶している。大変好評で、映画を見た後、必ずホンモノの主演男優と交流できるという新しいスタイルの映画興行を確立した、と自負している(笑)。

もちろん、1人でも多くの人にこの映画を見てもらいたいからだが、私自身にとっても大きな発見があった。2015年の新宿区議選で私は1018票を獲得したのだが、選挙の素人だったから正直誰が投票してくれたのか、ほとんど分からなかった。それが、映画上映後に観客と交流していると、「私、あの時投票したよ!」という人が何人も名乗り出てくれたのだ。

それだけではない。学生時代に歌舞伎町のディスコでアルバイトをしていたという男性はこう語ってくれた。

「映画を見て選挙の大変さが分かった。歌舞伎町の住人だって政治に関心がないわけじゃない。関心が持ちにくいのは、自分たちの代表がいないからだ」

こんな人もいた。杉並区民だが、外国人向け日本語教室のボランティアをしているという女性だ。

「私たちは飲食店で働く『外国人ママ』にも日本語を教えているんだけど、正直どんな風に対応していいか分からない時がある。彼女たちは日本が好きで日本に来ている。決して出稼ぎばかりじゃない。彼女たちにどう対応したらいいか、教えてほしい」

こういった生の住民の声を聞いて、私は改めて政治家として自分がやるべきことを理解した。まず実現しなければいけないのは、日本人にとっても外国人にとっても安全で安心な街づくりだ。私が住む新宿は住民の12.5%、8人に1人が外国人を占める。先日の国会で新しい入管法が成立したが、これからどんどん外国人労働者は日本で増えていく。彼らを排除するだけでなく、どうにかして同じ日本に暮らす仲間として受け入れることが必要だ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story