コラム

美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ足りないもの

2016年11月23日(水)06時58分

写真提供:筆者(すべて)

<起業家の大会に招かれて訪れた「中国のハワイ」こと海南島。自然は素晴らしく、アトラクション、夜の娯楽も充実。カジノ解禁の議論も進み観光地として飛躍する可能性を秘めているが、中国のサービスはまだまだ三流だ> (上写真:海南島のビーチと、美女の雑技ショー)

 新宿案内人の李小牧です。前回のコラムでは、海南島で11月11日に開かれた若手起業家の世界的ネットワーク「EO」(Entrepreneurs' Organization、起業家機構)の中国大会で講演したことについて書いたが、今回はその「中国のハワイ」こと海南島の体験記をお届けしたい。最高の自然とレジャー施設、そして、それを台無しにする三流のサービスを味わってきた。

 海南島を訪れたのは初めてだった。ビーチリゾートである海南省の三亜市には6泊もさせてもらったのだが、この間の主な仕事は講演の1時間だけ。残る時間はたっぷりと「中国のハワイ」を堪能させてもらった。青い空と白い砂浜、美しい海は見事というしかない。本物のハワイ以上だと感じた(もちろんハワイには行ったことがある)。

 ビーチを歩くと、中国人、とりわけ北方の人間が目立つ。中国北部の冬といえば、石炭暖房による大気汚染が深刻だ。PM2.5から脱出してきた人も少なくないのだろう。

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 すばらしいのは自然だけではない。クルーズや離島ツアー、ジェットスキー、ヘリコプター遊覧飛行、パラシュート体験などアトラクションが充実。レジャー観光地に必要なものはなんでもそろっている。

 加えて、"夜の娯楽"の充実っぷりにも驚かされた。ストリップと見まごうような、半裸の美女たちによるダンスショー、ポールダンス、外国人美女による雑技ショー、泡パーティーなどバラエティーに富んでいる。かつては高級カラオケやナイトクラブでの「飲む、買う」ばかりだったが、ショーやアトラクションの要素が高められている。

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 中国共産党は毎年、エロコンテンツ撲滅キャンペーンを展開するなど「儒教的なきまじめさ」で知られている。それにもかかわらず、限りなくストリップに近いダンスショーやポールダンスが合法というちぐはくな状況にある。大人の遊び、情のある街は社会にとって必要なもの。そうした夜の娯楽を認めていく過渡期に中国は差し掛かっているのだろう。

 ただし、海南省以外での規制はもっと厳しい。なぜならば、海南省は世界的なリゾートを目指す「国際旅行島」計画を推進しているという裏事情があるからだ。夜の娯楽だけではない。エロと並んで御法度のカジノまでもが解禁に向けた議論が進められている。

 日本でもカジノ解禁は政策課題だが、拒否反応を示す人が強くなかなか前進できないのが現状だ。だがアジアに目を向ければ、外国人をターゲットとした統合型リゾート(IR)の建設がトレンドとなっている。マカオ、シンガポール、韓国が先行しているが、ひとたびカジノが解禁されれば海南省が猛烈な追い上げを見せることは間違いない。乗り遅れることがないよう、日本政界もいち早く議論を進めてほしい。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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