コラム

熊本地震に寄せられた中国人の温かい言葉(とお金)

2016年04月28日(木)14時33分

中国から続々とSNSで届いた声援

 今回の地震は、海外メディアも現地で取材をしている。欧米の取材クルーを何組か見かけたし、中国メディアも私たち以外に何社かいた。それだけ関心が高いのだ。私たちの取材成果は後日、中国の動画配信サイトで公開される予定だが、リアルタイムの状況を伝えたいと思い、私は中国の大手SNSである微博(ウェイボー)と微信(ウェイシン、WeChat)を使って逐一、現地の状況を発信していった。約19万人いる私のフォロワーからどのような反応が寄せられたと思うだろうか?

「被災者の無事をお祈りします」
「この困難を乗り越えられますように」
「李さんがんばって! 私も寄付したい」
「どうやったら寄付できますか?」
「李さんみたいに支援に行きたい!」
「熊本の復興を支持する」

 温かい言葉が次々と寄せられた。言葉だけではない。「被災地に行けないのが残念。代わりに寄付しておいて!」などのメッセージとともに、次々とお金が振り込まれてきたのである。モバイル・インターネットが発展している中国では、スマホ同士で簡単に個人間送金ができる。海の向こうから私のスマホにお金がざくざく飛んできたという次第だ。

lee160428-e2.jpg

微博で私宛てにお金を振り込んでくれたフォロワー。中国人たちから預かった義援金はあとでまとめて被災地に届ける予定(画像を一部修正しています)

lee160428-f2.jpg

微信でも個人間送金により義援金が届く(画像を一部修正しています)

「中国人は日本の不幸を喜んでいるのでは?」と驚いた人もいるかもしれない。実際、「熊本地震記念ビール無料サービス」「地震記念割引セール」といったひどい話がニュースになった。しかし、こうした人はごくごく一部。日本の地震被害に同情する声が圧倒的だ。私のSNSにもバカな書き込みをする輩が数人現れたが、あっという間に他の中国人ネットユーザーに批判されてコメント欄から消えていった。

【参考記事】中国は反日? 台湾は親日? 熊本地震から考える七面倒くさい話

 思い起こせば、東日本大震災当時とはずいぶん状況が変わった。日本への同情を素直に示す人の割合が増え、バカの数が減った。なぜだろうか?

"爆買い"ブームの中で日本への関心が高まり、日本について知っている人が増えたことがひとつ。また、「熊本熊(くまモン)」の力も見過ごせない。くまモンは中国でも大人気のキャラクターで、中国人にとって熊本=くまモンの故郷。訪れたことはなくても、熊本に親近感を抱いている人は多いのだ。知識も興味もなければひどいことでも平気で言えるだろうが、相手を知ってしまえば野放図な発言はできない。中国人の態度を変えるのに、くまモンの貢献は決して少なくなかっただろう。

 SNSには多くの写真を載せたが、その中でも特に中国人の胸を打ったのが冒頭の1枚だ。阿蘇神社近くの路地裏で、被災者の人々が食事をしている姿を撮影した写真である。困難に負けない姿は、被害の大きさに衝撃を受けていた私に勇気を与えてくれた。そして写真を見た中国人たちも、日本人の力強さに感銘を受けたとのコメントを寄せてくれたのだ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story