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政権直撃のパー券裏金問題と検察「復権」への思惑
世論の次に永田町が気にするのは......
第2に、「検察の復権」がある。2020年1月、黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を認める閣議決定を安倍晋三内閣が行ったことを契機に、「政治が検察人事に手を入れる」ことに猛反発する動きが起きた。定年延長に確たる法的根拠を与える検察庁法改正に反対する立場から、松尾邦弘元検事総長や清水勇男元最高検検事ら有力検察OBが森まさこ法相に提出した意見書は、安倍政権について、
「フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。」
という激烈な内容だったことは語り草になっている。反体制知識人が書くアジテーションならまだしも、法務検察の有力OBの手による意見書はインパクトを世間に与えた。21世紀の「政治と検察の関係」(政検関係)はこの時に緊張がピークに達したとも言える。
その後、菅義偉政権を経て岸田政権が樹立され、安倍元首相が凶弾に斃れ、自民党内の権力構造が変容していく動きと並行して検察は「二度と人事に口出しされない実力」を蓄えるべく、河井克行元法相夫妻の公職選挙法違反事件や洋上風力発電贈収賄事件などで「バッジ」(現役国会議員)の逮捕・起訴に踏み切っていく。今回の派閥パー券裏金捜査はこうした復権過程の最終段階だとも言える。
永田町(政治)が最も気にするのは国民の支持(世論)だが、次に気にするのは米国と特捜検察と財務省だとも言われる(昨今であれば中国を気にする政治家も増えているかもしれない)。過去の人事介入に対する清和研(安倍派)への「意趣返し」だと斜めに見る向きも根強い中で、特捜検察が自民党最大派閥の幹部を捜査対象にして何も「成果」がなかったということになれば復権は遠くなり、「成果」が上がれば復権は果たされるということになろう。
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