気付けば社内は「専門性のないゼネラリスト」だらけ...中途半端なジョブ型雇用が「低賃金」を加速させる

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<人手不足のなかで「転勤なし」などの好条件を提示する企業が増えている。その動き自体は評価できるが、従来の雇用形態を中途半端に残したままでは企業の生産性が下がって賃金も下がることに>
このところ、転勤なしを条件に社員を採用する企業が増えている。パーソル総合研究所の調査によると、転勤がある企業への応募を回避する人は約半数に達するという。人手不足が深刻であることから、多くのビジネスパーソンが嫌がる転勤をなくすことで、人材獲得を有利に運ぼうという算段である。
戦後日本は、無制限残業や転勤が当然視される一方、終身雇用と年功序列が約束されるという特殊な雇用形態だった。
諸外国では標準的となっている、いわゆるジョブ型(所属ではなく業務に対して賃金を払う雇用形態)の場合、その性質上、無制限の転勤はなじまない。ジョブ型の企業社会においては、転勤を伴う雇用形態というのは、幹部候補生や特別な専門職に属する人に限った話と考えてよいだろう。
日本でも転勤なしの雇用形態が普及してきたという動きは、ジョブ型雇用シフトの一形態と見なすことができるし、実際、大企業を中心に多くの企業が従来の日本型雇用を改め、諸外国と同様の雇用形態を模索しているともいわれる。
ただ日本の場合、完全にジョブ型への移行が実施できず、終身雇用や年功序列を残したまま、表面的にジョブ型に移行したり、転勤なしの制度を整えるケースが少なくない。
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