動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
China's Ready for a Trade War. The U.S. Isn't. Here's Why | Opinion

訪中したスペインのペドロ・サンチェス首相(左)と話し合う中国の習近平国家主席(4月11日、北京) ANDRES MARTINEZ CASARES/Pool via REUTERS
<トランプは各国に課した相互関税を90日間停止すると発表したが、中国に対してはその限りではない。米中貿易戦争が始まりそうな様相を呈しているが、中国はもうかつての中国ではなく、アメリカには「不都合な真実」がある>
ドナルド・トランプ米大統領は4月9日、中国からの輸入品に合計145%の追加関税を課すと発表した。第1次政権時に開始した対中貿易戦争を継続、加速させた格好になる。だが今回は状況が大きく異なり、中国の対応は米政府の予想を超えている。
中国政府に動揺は見られず、代わりに戦略的な対応が取られた。中国は当初、報復関税で応戦するのではなく、標的を絞った対抗策に出た(編集部注:4月11日には中国も、アメリカからの輸入品に対する関税を合計125%に引き上げると表明。ただし、アメリカが今後さらに追加関税を引き上げても相手にしないとしている)。
標的を絞った対抗策とは、アメリカの農業輸出150億ドル相当を狙い撃ちにしたものだ。共和党の地盤を直撃する形で、ちょうど種まきの時期に経済的打撃を与えた。このタイミングは、すでに困難に直面している農家の不安をさらに深めるものとなった。
今回の「消耗戦」で、中国は単なる報復にとどまらず、対応を進化させている。
2018年にトランプ関税戦争の第1幕が始まって以降、中国は輸入構造を見直し、ブラジルやロシアからの輸入を増やしてきた。かつてアメリカ産農産物は中国市場の40%を占めていたが、現在は20%を下回っている。代わってブラジルとロシアが、中国の需要をより政治的な縛りが少ない形で満たしている。
農業貿易は「変化」の一部にすぎない。中国はレアメタル市場における支配力を外交手段として使い始めている。半導体、EV、防衛機器に不可欠な鉱物資源の輸出制限だ。これらは単なる対抗措置ではなく、長期的な視点で積み上げてきた戦略的再構築の一部を成す。