コラム

新しいグローバルスタンダードを身につけないと令和の時代は生き延びられない

2019年05月08日(水)15時00分

新しいグローバルスタンダードに背を向けるのは得策ではない(写真はイメージ) bee32-iStock

<例えば日本人が会議中に目をつぶっているのだって、本人がどういうつもりであろうが、相手に対して誠意を示していないという意味になるのは至極当然。上司部下も然り。役職者というのは人格的にエラいのではなく、あくまで機能としての命令権限を持つ者との割り切りが必要だ>

これまで「グローバル・スタンダード」という言葉には「欧米流」というニュアンスが含まれていた。だが社会のIT化によって行動様式の共通化は予想以上のペースで進んでおり、欧米流とは一線を画した新しいグローバル・スタンダードが確立しつつある。この行動様式を身につけなければ、日本人はますます世界から取り残されてしまうだろう。

グローバル・スタンダード=欧米流ではなくなった

日本社会がガラパゴス化していることは多くの人が指摘しているが、こうした指摘に対する反発の声も大きい。ガラパゴス論に対して反感を覚える人の多くは「欧米流に合わせる必要はない」という意識を強く持っているはずだ。

だが社会がIT化するということは、全世界の人が同じツールを使い、同じ概念を持つことを意味している。各国ではIT化の進展に伴い、異なる文化圏の人がスムーズにやり取りするための共通行動様式が急速に確立されつつある。

この新しい共通行動様式は、いわゆる欧米流とは似て非なるものといってよい。

確かに共通言語は英語であり、もともと欧米で発達したものがベースになっているケースが多いかもしれないが、欧米流をそのまま適用したものではない。アジアや中東、アフリカなど様々な文化圏の人がうまくやり取りできるよう、内容はかなりアレンジされているので、欧米流=グローバルスタンダードと認識すると状況を見誤る。

日本がガラパゴス化しているという話は、欧米流に合わせられないということではなく、新しく台頭してきた新グローバル・スタンダードに合わせられないという意味に捉えた方がよい。

確かに無理に外国に合わせる必要はないかもしれないが、条件はどの国にとっても同じである。そうであるからこそ、お互いに無理のない範囲で共通のやり取りができるよう新しいスタンダードが生まれてきた。日本だけがこうした共通行動様式に背を向けるというのは、どう考えても得策ではない。外国に無理に会わせる必要はないかもしれないが、日本だけがあえて違う行動を取る必要もない、ということである。

では、新しいグローバルスタンダードというのはどのようなものだろうか。以下では、いくつか具体例を挙げて解説してみたい。

①禁煙

多様な人たちと触れあう公共の場において原則禁煙というのは、全世界的な潮流である。かつての途上国ではタバコを吸う人が多いのは当たり前であり、今でも地域によっては喫煙文化が残っている。だが、パブリックな場において禁煙というのは、経済水準に関係なく標準的な考え方になりつつある。日本の受動喫煙対策は、現時点においても先進国では最低水準だが、受動喫煙防止法が骨抜きになった現実を考えると、新グローバル・スタンダードとの乖離はますます激しくなるだろう。

②男女平等

男女平等についても同じである。実は言われているほど、欧米でも男女平等が進んでいるわけではなく、アジア地域では日本と同様、いまだに男尊女卑が激しい国も多い。だが少なくとも対外的には、露骨に男性の後に女性が付いていくという行動は取らない人たちが増えている。

秘書をしている女性が、男性上司に自分の後を歩くのではなく、横を歩いて欲しいと言われたという話を聞いたことがあるが、女性が劣位にあると見える行動を取ることは避けた方がよいというのが共通認識である。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南ア、イスラエルのラファ攻撃「阻止する必要」 国際

ビジネス

マイクロソフト、中国の一部従業員に国外転勤を提示

ビジネス

先進国は今のところ賃金と物価の連鎖的上昇回避、バー

ワールド

北朝鮮の金与正氏、ロシアとの武器取引否定 「ばかげ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story