コラム

トランプ「対中カード」外交で捨て駒にされる台湾

2019年02月05日(火)17時30分

こうした議論で気になるのは、誰も台湾人のことを親身に考えていないことだ。中国は20年以上も軍拡に努めた結果、米空母艦隊の接近を阻めても、台湾の武力制圧に乗り出すと致命的なやけどを負うだろう。

中国は台湾東岸の制海空権を取れず、台湾西岸に上陸しようにも台湾軍の堅い守りにはね返される。水膨れした自信をへし折られると、中国人はもろい。中国指導部は信を失い、地方は割拠し、かつての国共内戦さながらの事態さえ起きかねない。

トランプも、台湾を無責任に対中カードとして利用して、多くの台湾人が殺される戦争を誘発してはならない。日本も軍事介入すれば、中国からミサイル攻撃を受ける以上、台湾のためにできることは限られていると自覚して、中台対立をなだめる方向で動くべきだ。

台湾には、自由と民主主義を身に付け、高い教育を受けた有能な人が多い。大陸から逃れてきた外省人の子孫さえ、自分たちを台湾人として意識している。19世紀の古い国家観にしがみついていがみ合うより、台湾というユニークな存在を21世紀のモデルとして生かしていくことを考えたほうがいい。

<本誌2018年02月05日号掲載>

※2019年2月5日号(1月29日発売)は「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集。技術力でアメリカを凌駕する中国にトランプは関税で対抗するが、それは誤りではないか。貿易から軍事へと拡大する米中新冷戦の勝者は――。米中激突の深層を読み解く。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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