コラム

米ロ中に引けを取らないベトナム外交のすごみ

2017年12月16日(土)11時10分

このロシアをベトナムは、軍事面での対中抑止力として利用している。ロシアと中国は準同盟国だが、それはアメリカに対抗するための政略結婚にすぎない。米中が接近すれば、ロシアは中国に対して協調から牽制に転ずる。

ベトナムは南シナ海に面する南部カムラン湾にロシア艦の寄港を認めているだけではない。ロシアから戦闘機や駆逐艦、潜水艦6隻を購入している。これらの戦力は、中国にとって南シナ海での不気味な攪乱要因だ。

大国とのむやみな対立を避ける一方、防衛力を強化し無言のすごみを利かせる。それでも相手が襲ってきたら断固として撃退――ユーラシア大陸の東のベトナムやフィリピン、西のベラルーシ、中央のウズベキスタンなど、これらしたたかな中小国は大国をあやし、張り合わせることで国の誇りを保っている。

米大統領の訪問に首都の米軍基地を使われても騒がない日本に、ベトナムの爪のあかでも煎じて飲ませたい。日本もこんな外交ができればいいが。

<本誌2017年12月19日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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