トランプも無視できない存在に成長した、暗号通貨の「現在地」を知る意味
暗号通貨を理解するなら、まずはすべての始まりであるビットコインとイーサリアムを起点にすべきだ znm-iStock
<激動の2017年を経て世界に定着した暗号通貨について知ることは、「業界外」の人間にも実利をもたらす>
「暗号通貨界隈は変化が早すぎる」と溜息混じりに言うのは界隈の人間だけで、大多数の人間にとっては暗号通貨(仮想通貨)は今も昔も「投機の対象」であり、「本源的な価値を持たない怪しげなもの」だろう。
しかし、実際のところ暗号通貨のイメージは、2017年を境に大手メディアでも界隈でも大きく変化してきた。
私が暗号通貨界に参入した2015年は、今とは対照的に「暗号通貨同士のトレードや特定の銘柄のホールドによって一攫千金を狙う」人は少なく、ビットコイン論文の著者であるSatoshi Nakamotoの思想に共感し無償で情報共有や技術開発を行ったり、ビットコインそのものの将来的な値上がりに期待してビットコインのみをホールドする人が多かった。
また、業界での起業も同様で「この業界でどのように事業として利益を出すか」は大きな課題として認識されており、国内外の取引所が既存の金融業界を驚かせるほどの利益を出し始めた2017年までこの認識は変わらなかった。
当時は今以上に暗号通貨の認知度は低く、暗号通貨といえば市場シェアの9割を占めるビットコインであり、ビットコインといえば東京を拠点にしていた取引所マウントゴックスでの流出事件というイメージであった。これらのイメージは強力で、大手メディアがビットコインを中立的、または好意的に取り上げることはほぼなく、誤解に基づいた報道も多かった。
当然、暗号通貨関連企業が大手メディアに広告を出すような状況ではなく、当業界での起業は完全に将来の需要をターゲットにしたものであり、今以上に先見性とリスクテイクが必要であった。
その後、正しい予測と適切な実行力を持った企業やベンチャーキャピタル(VC)は莫大なリターンを獲得し、現在はこれらのリターンを再投資する形で業界内で資金が還流している。イーサリアム関連のプロジェクトに大きく投資するConsenSysや、CoinbaseやRippleに初期投資したアンドリーセン・ホロウィッツは好例だ。
2010年以降のビットコインを巡る物語は、今も界隈に残る著名人のエピソードも含めてナサニエル・ポッパー著の『デジタル・ゴールド』(邦訳・日本経済新聞出版社)が詳しい。ビットコインが数ドル程度で取引されていた時代において関係者が何を考え、どのように行動していたのかが説明されている。余談だが、東京は暗号通貨の聖地であったといっても過言ではなく、現在も業界を牽引する有名人の中には東京を拠点にしていた者が少なくない。
この筆者のコラム
トランプも無視できない存在に成長した、暗号通貨の「現在地」を知る意味 2019.07.26