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イスラエル人女優が「クレオパトラ」役、でもホワイトウォッシングとは言えない?
世界3位の稼ぐ女優、イスラエル生まれのガル・ガドット Danny Moloshok-REUTERS
<1963年『クレオパトラ』の主演はエリザベス・テイラーで、白人のユダヤ教徒、シオニストだった。ガル・ガドットを主演に新たなクレオパトラ映画の製作が発表され、批判も出ているが、話はそう単純ではない>
米国のパラマウント・ピクチャーズがクレオパトラの映画を撮るらしい。クレオパトラの映画といえば、1963年に20世紀フォックスがエリザベス・テイラーを主演に制作した超大作『クレオパトラ』を思い出す人も多いだろう。
1963年の作品は当時の金額で4400万ドルという破格の制作費をかけた作品で、これ1本で20世紀フォックスは破産寸前にまで追い込まれたことでも知られている。
古代エジプトの女王で、絶世の美女といわれるクレオパトラの波乱に満ちた生涯とカエサル(シーザー)やアントニウス(アントニー)といった彼女をめぐる男たちの愛憎の物語である。この映画をきっかけにエリザベス・テイラーは、映画さながら、アントニウス役だったリチャード・バートンと不倫関係に陥った。世界的な人気俳優同士のスキャンダルということで、大騒ぎになったものの、結局2人は結婚した(その後、離婚、再婚、離婚)。
さて、問題は新しいクレオパトラのほうだ。主演は、ガル・ガドット。『ワンダーウーマン』で主演のワンダーウーマンを演じた女優である。
ガドットは、フォーブス誌による、2020年の世界でもっとも稼ぐ女優ランキングで、ソフィア・ベルガラ、アンジェリーナ・ジョリーについで第3位にランクされている。まあ、プトレマイオス朝エジプトのファラオ役を演じるにふさわしい人気っぷり、稼ぎっぷりであろう。
ところが、BBCは興味深いニュースを報じている。この配役がいわゆる「ホワイトウォッシング」ではないかという批判がソーシャルメディアを中心に流れているというのである。
ホワイトウォッシングとは、白人以外の役柄に白人の俳優が配されることを指す米映画界の業界用語であり、最近はよく報道でも用いられるようになった。日本がらみでは、士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を原作とした『ゴースト・イン・ザ・シェル』の主役をスカーレット・ヨハンソンが演じたところ、アジア系がキャスティングされるべきだったとの議論が巻き起こっている。
クレオパトラはアラブ人、アフリカ系だったのか
クレオパトラのケースでいえば、エジプトの話なんだから、白人ではなく、エジプト人、アラブ人、あるいはアフリカ系の女優が演じるべきという批判が出たのである。だが、実はそう単純な話ではない。
歴史好き、エジプト好きであれば、クレオパトラの属するプトレマイオス朝が、エジプトではなく、ギリシアやマケドニアに起源をもつことは常識であろう。クレオパトラ自身、エジプト語もできたそうだが、母語はギリシア語である。
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