ニュース速報

ビジネス

訂正:焦点:アジアの富裕層、パリ攻撃で仏渡航敬遠 観光産業に動揺

2015年11月19日(木)16時06分

 11月18日、パリ同時多発攻撃やエールフランス機への爆破予告などの影響で、世界の観光産業に動揺が走っている。アジアの富裕層には、欧州への旅行を考え直そうとする動きもあるようだ。パリのルーブル美術館で16日撮影(2015年 ロイター/Benoit Tessier)

[18日 ロイター] - パリ同時多発攻撃やエールフランス機への爆破予告などの影響で、世界の観光産業に動揺が走っている。アジアの富裕層には、欧州への旅行を考え直そうとする動きもあるようだ。

旅行会社(訂正)がパッケージ旅行をキャンセルしたほか、パリ事件で神経質になった観光客が旅行を延期したり行き先を変更するなどで予約がさらに落ち込むのではないかとの見方もある。

旅先で多くのお金を落としていく中国人旅行客の中には、パリへの渡航を避けてドイツなど欧州の他の都市を選ぶ人々も出てきた。先週パリ旅行中だった一部の中国人は、すぐに行き先をスイスに変更したという。

中信旅遊集団(北京)のある社員は、フランス関連の業務は不振が続くだろうと予想する。「地震などの自然災害とは違い、テロ攻撃による人々の不安は尾を引く。少なくとも3カ月は続くだろう」と話した。

世界でも観光客の多いフランス。駐仏中国大使によると、今年の中国人旅行者は前年比1.7%増の200万人以上が見込まれていた。日本では、フランスは12番目に人気のある旅行先だ。

観光業は同国の国内総生産(GDP)の7%以上を占め、観光客は昨年パリだけで3220万人に上った。旅行客の不安がクリスマス時期まで長引けば、仏経済にはさらなる下方圧力となるだろう。

上海で不動産仲介業をしているビッキー・ツェン氏(27)は「それでもパリには行きたい。ただ、こんな事件があっては、あと1年は行かないだろう」と話す。会社員のリー・マオキン氏(29)は「パリはロマンチックな街というイメージだったが、治安の問題が無視されていたのではないか。もし自分が旅行するなら、この事件で考えを変えたかもしれない」と言う。

<深刻な懸念>

パリへの定期便を運航しているアジアの航空会社では、韓国のアシアナ航空<020560.KS>がパリ便のセキュリティーチェックを厳しくした。台湾のエバー航空<2618.TW>は13日の同時攻撃後にキャンセルが相次いだといい、シニアバイスプレジデントのK.W. Nieh氏によると「15日だけで300件の予約のうち50件がキャンセルになった。パリ便は通常満席だったが、事件以来、搭乗率は70―80%に落ちている」と言う。

中国国際航空(エアチャイナ)<601111.SS>やシンガポール航空などは、パリ便について数日から数週間にわたりキャンセル料を免除すると発表した。

豪ツアーオペレーター協会(CATO)のデニス・バニック会長は、顧客は欧州旅行に対し明らかに神経質になっていると指摘。「人々は、テロ攻撃はどこでも起こり得るということを実感した。その時が来たら、残念ながら巻き添えにならないよう逃げることは不可能なのだ」と述べた。

ただ、こうも話した。「こういった事件が発生すると、人々は予約を延期する。だが、旅行そのものを思いとどまらせることはできない」

(Swati Pandey記者、Faith Hung記者、Donny Kwok記者、安藤律子記者、Aradhana Aravindan記者、Joyce Lee記者、Anne Marie Roantree記者 翻訳:田頭淳子 編集:加藤京子)

*本文2段落目の「旅行会社2社」を「旅行会社」に訂正します。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン

ワールド

EU、米と関税巡り「友好的」な会談 多くの作業必要

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、米中緊張緩和の兆候で 週

ビジネス

米国株式市場=4日続伸、米中貿易摩擦の緩和期待で 
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中