コラム

マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無料公開するのか」

2024年05月14日(火)16時00分

【AIのユースケース】

(質問)
データセンターは最終的に1000億ドル相当の推論ができる規模。それだけの規模のデータセンターを何に使うつもりか?

(16:19)
われわれのすべてのプロダクトにAIを使えると思う。Meta AI汎用アシスタントは、チャットボットよりも複雑なタスクを実行できるものになっていく。なのでかなりのコンピュートと推論が必要になると思う。

(16:58)
1つのAIがすべてのことをするようになるとは思っていない。すべてのビジネス、すべてのクリエーター、インフルエンサーは、自分たち専用のAIを求めるようになるというのが僕の予測だ。自社AIに競合他社の製品を褒めてもらいたくないからだ。

約2億人のクリエーターがMetaのサービスを使ってくれている。彼らの多くはファンとより密接に交流したいと思っているが、物理的に無理。ファンもクリエーターとより密接に交流したいと思っている。クリエーターが自分好みにAIを訓練してファンと交流できるようになれば、すばらしいことだと思う。

(18:05)
そうした消費者向けユースケースの他にも、妻とやっている財団で、科学の進歩のためにAIを利用できる。なのでデータセンターの用途はいくらでもあると思う。

【巨大モデルvs特化モデル】

(18:46)
巨大モデルがいいのか、小規模モデルで特定の用途に特化させるほうがいいのか。正直言って分からない。

ただ基盤モデルの外側にツールをいろいろ作っていくことで、次の基盤モデルの内側にどんな機能を追加すべきか見えてくる。

例えばLlama2は最新情報を持っていなかったので、検索エンジンにアクセスできるツールを開発した。それが便利だったのでLlama3には検索エンジンにアクセスできるツールが内蔵された。今、Llama3の外側にエージェント的なツールを開発している。そしてそれはLlama4に内蔵されるようになると思う。

つまり、いろいろな追加機能を基盤モデルの外側に実験的に取り付けて試行錯誤することで、次の基盤モデルにどんな機能をつければいいのか明らかになってくるのだと思う。(湯川解説:サードパーティーがLlamaの周辺に追加機能を取り付けた特化型モデルを開発することは奨励するが、その追加機能が多くのユーザーにとって価値のあるものならMeta自身が次期モデルに内蔵していくことになり、次期モデルがリリースされるとサードパーティの特化型モデルが陳腐化する可能性がある、という意味)。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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