コラム

チャット型AIは幻滅期に入ったのか

2023年07月20日(木)16時40分
生成AI

Ascannio-Shutterstock

<ChatGPTのユーザー数が減少。一部ではハイプサイクルの幻滅期に入ったのではないかとの指摘もある>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

ChatGPTのユーザー数が減少している。ハイプサイクルで言うところの幻滅期に入ったのかもしれない。個人的には、半年以内にチャット型AIが自律エージェントに進化すると言われていることを考えれば、言語AIブームがすぐに終わることはないとは思うのだが。

ロイター通信が調査会社similar webのデータとして報じたところによると、6月のChatGPTのサイトへのアクセス数が前月比で9.7%減少したという。

米調査会社ガートナーによると、社会に影響を与えるような技術革新は、最初は熱狂的に受け入れられるが、その後幻滅期に入る。それでもゆっくりとした進化を続け、最終的には成熟期に入り、社会に広く普及するという。ハイプとは期待のピークという意味で、この世間の需要度の変化のサイクルをハイプサイクルと呼んでいる。

ChatGPTの利用率が低下したのは、ChatGPTがハイプ期を通過し、幻滅期に入ったのからだという指摘がある。つい最近までテレビでも取り上げられるほど話題になっていたが、確かにこれはハイプ期だったと思う。あまりにもいろいろなところで話題になるので、実際にChatGPTを触ったという人も多いことだろう。実際に触った感想はどんなものだったのだろうか。ChatGPTが持っているのは2021年9月までのデータだし、回答に嘘が混じることも多い。便利な面もあるが、やはり使えない。そう感じた人が多かったのかもしれない。なので、それ以降は使わない。そういう人が多いのであれば、いわゆる幻滅期に入ったのだと思う。

一方で、米国では学校が夏休みに入ったことが利用率の低下に影響しているという指摘がある。米国の学生のほとんどがChatGPTを利用していると言われる。学習支援はChatGPTの最も便利な用途の一つだ。ChatGPTがあまりに便利なのでオンライン家庭教師サービスを脱会するユーザーが急増。有力家庭教師サービスのCheggの株価が40%以上も下落したほどだ。これだけChatGPTを利用する米国の学生たちが夏休みに入ったのだから、利用者が10%減るのは当然だという意見がある。

夏休みが終われば、ChatGPTの利用率が再び上向くのか。幻滅期に入ったかどうかは、9月の数字を見てから判断したいと思う。

しかしたとえChatGPTが一時的な幻滅期に入ったのだとしても、チャット型AIには自律エージェントと呼ばれる次の進化が待ち受けている。自律エージェント機能が実装されることで再びハイプ期に入る可能性があると思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story