コラム

ブロックチェーンからポスト資本主義まで。米の富豪たちがスマートシティを砂漠の真ん中に作りたがる理由

2021年10月13日(水)12時52分

平らな大地に一から理想の都市を作り上げられたら(写真はMarc Loreの未来都市テロサ) 12News/YouTiube

エクサウィザーズ AI新聞(2021年10月1日付)から転載

米の富豪たちによるスマートシティ建設計画が幾つか浮上してきている。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がアリゾナ州に約100㎢の土地を購入したほか、仮想通貨の大富豪Jeffrey Berns氏はネバダ州に約270㎢の土地を購入、小売大手Walmartの元幹部のMarc Lore氏は、米西部で800㎢の土地を物色中だ。彼らはどうして新しい街を一から作りたがるのだろうか。

街を一から作るべきかどうかの判断は、恐らく家をリフォームすべきか、新築すべきかの判断に似ている。改良するだけで十分ならリフォームのほうが建築費が少なくて済む。しかし根本部分を作り直さないとならないのなら、新築したほうがいい。

上に挙げた富豪たちは、新しい技術を最大限に活かすためには、都市を根本部分から作り直すしかないと考えているのだろう。

では彼らは、どのような技術を使って、どのような思いで、都市を根本的に作り直そうとしているのだろうか。

ゲイツ氏の都市は、自動運転車天国?

実はビル・ゲイツ氏は、同氏のスマートシティ構想を正式に発表しているわけではない。アリゾナ州Belmont地域で広大な土地を購入した不動産投資会社Belmont Partnersが、同地域でのスマートシティー構想を発表。不動産ジャーナリストの調査で、ゲイツ氏の資産を管理する投資会社が、Belmont Parnersを通じて約97㎢の土地を8000万ドルで購入したことが2017年に明らかになった

Belmont Partnersが当時、ネット上で公開した発表文には、次のように記載されていたという。

「Belmontは、高速デジタルネットワーク、データセンター、新しい製造技術と流通モデル、自動運転車と自動流通センターなどの最新技術でコミュニケーションとインフラをバックボーンにした、未来志向のコミュニティーになります」

「3800エーカー(約15㎢)は、オフィスや店舗などの商業施設。470エーカー(約1㎢)が学校。そのほかは約8万世帯の住宅地になります」

「なんの特色もない土地が、柔軟なインフラと目的を持った最先端都市のモデルになります」

発表文にはまた「今回の投資は、Belmontを最先端インフラを使って持続可能な街を作るためのテンプレートにするでしょう」と書かれている。世界のスマートシティーのモデルケースにしたいという思いもあるようだ。

シリコンバレーのあるカリフォルニア州と比較すれば、隣接するアリゾナ州は人口密集地域が少ない。そういうこともあってか、アリゾナ州は自動運転の実証実験には協力的で、自動運転に取り組むテクノロジー大手の多くは、アリゾナ州での実証実験を繰り返している。なので自動運転車をスマートシティーの交通インフラとするのであれば、アリゾナ州が最適。ゲイツ氏はそういうことも考慮して、アリゾナ州を選んだのかもしれない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾海峡で「戦闘準備パトロール」 米議員団

ビジネス

米経済に勢い、緩和縮小加速に前向き=アトランタ連銀

ビジネス

焦点:米テック企業に広がる労組結成の波、経営陣は対

ワールド

南アは透明性を持って行動、渡航制限は不当=保健相

MAGAZINE

特集:AI戦争の時代

2021年11月30日号(11/24発売)

人工知能を持つ戦闘マシンが自らの判断で敵を殺す ──「核より恐ろしい」新型兵器が現実の戦場に現れた

人気ランキング

  • 1

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 2

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「両親」になった

  • 3

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督のマーベル映画『エターナルズ』

  • 4

    多数の難民を受け入れたスウェーデンが思い知った「…

  • 5

    ナイキのシューズがクリスマス、いや来年夏まで入荷…

  • 6

    あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃…

  • 7

    今度はディオールの写真を「人種差別」と吊し上げた…

  • 8

    現在の経済混乱は企業が続けてきた「ケチ経営」のツ…

  • 9

    EVは地球に優しくても人間に優しくない一面をもつ──…

  • 10

    日本のコロナ感染者数の急減は「驚くべき成功例」─英…

  • 1

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 2

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「両親」になった

  • 3

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督のマーベル映画『エターナルズ』

  • 4

    あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃…

  • 5

    ナイキのシューズがクリスマス、いや来年夏まで入荷…

  • 6

    勝海舟があっさり江戸城を明け渡した本当の理由 「無…

  • 7

    多数の難民を受け入れたスウェーデンが思い知った「…

  • 8

    コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で.…

  • 9

    セブンイレブンに「来店」したクマ、感染症対策も欠…

  • 10

    恋の情趣・風雅・情事 ── 江戸の遊廓で女性たちが体現…

  • 1

    【動画】リビングの壁を這う「猫サイズ」のクモ

  • 2

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 3

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督のマーベル映画『エターナルズ』

  • 4

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「…

  • 5

    「可愛すぎて死にそう」ウサギを真似してぴょんぴょ…

  • 6

    ネコはいつでも飼い主を思っていた...常に居場所を頭…

  • 7

    突然の激しい発作に意味不明の言葉──原因は20年前に…

  • 8

    時代に合わなくなったヒーロー「ジェームズ・ボンド…

  • 9

    あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃…

  • 10

    背中を売ってタトゥーを刻む『皮膚を売った男』の現…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中