コラム

「東京がアジアのイノベーションハブになる」中国人ビジネスマンが東京で起業した理由

2018年12月17日(月)16時00分

──中国ベンチャーがアグレッシブだという話はよく耳にします。googleの元中国支社長も、そんな話をどこかでしていました。二番煎じであろうとなかろうと、モノマネであろうとなかろうと、とにかくユーザーに受け入れられるものをがむしゃらに作ってくる。同支社長は、いずれ中国IT企業が米国のIT企業を凌駕するようになる、というような感じのことを言ってました。

ドン氏  
中国本土はもちろん、東南アジアでさえIT業界は日本よりは競争が激しいんです。というのは、東南アジアの大手ITベンチャーには、米中の資本が必ず入っています。特に東南アジアのeコマース、シェアリング、ペイメントの上位3位のベンチャーの後ろには中国IT大手がいて、東南アジアで代理戦争を繰り広げているんです。なので競争は、ものすごく激しいです。世界中のITビジネスの領域に、中国IT大手は入っていこうとしています。

──中国のIT大手が日本市場に入ってこないのはどうしてなんでしょうか。

ドン氏
ガラパゴスだからではないでしょうか。ガラパゴスって最高なんです。

──え?ガラパゴスっていいことなんですか?ガラパゴスって、制度上の閉鎖性ということですか?

ドン氏
いや文化と心理的なバリアの方が大きいと思います。中国の電化製品って、ものすごくよくなってきているのに、日本ではまだほとんど売れていません。例えば中国製スマートフォンは最近とても性能がよくなっています。でも日本ではほとんど売れていないですね。日本人消費者側に、まだ中国製品に対する抵抗があるみたいですし、それ以上に中国企業側に日本に対する畏敬の念があるように思います。中国企業側にすれば、日本は長年の技術大国。まだまだ勝負するのが怖いと思っているようにみえます。まずはほかのアジア諸国を攻め終わったあとの最後の砦として、日本市場を残しているように思います。

日本の住環境のすばらしさに中国人エンジニアはびっくり

──十分に市場が大きいのに競争が激しくない。起業するには、すばらしい市場だということですね。では2つ目の人材集めに有利だという話はどうなんでしょう。中国には理系の学生が年間何百万人も卒業しているという話を聞きます。人材集めは中国の方が有利に思えるんですが。

ドン氏
中国の大学の理系の卒業生は年間400万人。日本の理系卒業生数とは桁が一つ違います。ただ人口も日本の10倍なんで、特にエンジニアが余ってるわけでもありません。その証拠に、北京、上海、深センなどの大都市のエンジニアの年収は、日本円で1000万円以上です。エンジニアは東京より高給取りなんです。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story