コラム

もう既に不老不死の時代!?「あと10年で、寿命回避速度に入る」レイ・カーツワイル氏

2018年03月05日(月)15時00分

不老不死が来る日を目指し、大量のサプリメントを飲んで健康管理しているといわれるカーツワイル MIT AGI/YOUTUBE

<人工知能の権威でシンギュラリティの提唱者、天才・カーツワイルの最新「不老不死」予測>

AI新聞から転載

レイ・カーツワイル氏が、人類はいずれ不老不死になるというような主張をしていたことは知っていたが、最近の講演の中で同氏が、あと10年でそういうような状態になると語っていたので、詳しく見てみることにした。

この講演は、同氏がマサチューセッツ工科大学で行ったものを同大学がYouTube上で2月14日に公開したもの。同氏は今後の人類の寿命について次のように語っている。

Applying this to health and medicine, this will get into high gear. We're going to really see us break out of the linear extension to longevity that we've experienced. I believe they're only about a decade away from longevity escape velocity where there is more time than is going by.

AIの急速な進化の成果を健康や医療に応用すると、これまでの平均寿命の直線的な伸びから逃れられるのではないだろうか。あと10年もすれば、老化の速度を超える速度で寿命が伸びるのではないかと考えている。



ここでのキーワードはlongevity escape velocity。「寿命回避速度」とでも訳せばいいのだろうか。英語版ウィキペディアによると、寿命が時間の流れを超えて伸びるという概念らしい。つまり医療の進化にともなう長寿化が加速し、老化の速度を超えるということだ。


自分はあと何年生きられるのか。日本の平均寿命は83歳なので、そこから今の年齢を引いた年月が、残りの時間と考えていいだろう。しかしそうした単純計算は、科学の進歩を考慮していないものだとカーツワイル氏は主張する。実際には、これからAIを使って医療が急速に進化するものとみられている。医療の進化による寿命の伸びが老化の速度を超えるなら、人間は永遠に生き続けられるかもしれない。

longevity escape velocity(寿命回避速度)の概念の提唱者たちによると、今後長寿化が加速するので人類初の150歳の人がこの世に生を受けたわずか10年後に生まれた人の中から、人類初の1000歳が登場することになるだろうという。

老いる速度を上回って医療が進化する?

ひょっとすると既に超長寿時代に入っているのかもしれない。カーツワイル氏は言う。

I think if someone is diligent they can be there already. I think I'm at longevity escape velocity.

diligentとは日本語で「勤勉」と訳されることが多いが、ここでは「健康に最大限気をつけている」というような意味なのだと思う。つまり「健康に最大限気をつけている人は、もう既に寿命回避速度に入っているかもしれない。私はすでにその状態にあるのだと思う」と語っているわけだ。 同氏は健康にはものすごく気を使っており、サプリメントを幾つも摂取しているというのは有名な話だ。

もちろん交通事故に遭うなどの不慮の事故で命を落とすことはあるが、健康に気をつけているほとんどの人にとっては、あと10年ほどで「少なくとも医療の進化と時間の経過が足並みをそろえる時代になる」というのがレイ・カーツワイル氏の予測だ。

レイ・カーツワイル氏のことをよく知らない人は、ウィキペディアの同氏の項目をどうぞ。

未来学者であり、発明家であり、実業家でもある。数々の賞を受賞している。まあ現在の天才の一人だ。

といってもビジネスの第一線から離れているわけではなく、現在はGoogleの社員。Gmailがメールの中身を判断し、「了解しました」「ありがとう」などの簡単なリプライを三択で用意してくれる機能は、同氏が中心になって開発したのだとか。

果たしてわれわれは既に不老不死の時代に入ったのだろうか・・・。個人的にはよく分からない・・・。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、和平合意後も軍隊と安全保障の「保証」必

ビジネス

欧州外為市場=ドル週間で4カ月ぶり大幅安へ、米利下

ビジネス

ECB、利下げ急がず 緩和終了との主張も=10月理

ワールド

米ウ協議の和平案、合意の基礎も ウ軍撤退なければ戦
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story