コラム

AIで教育を「ど真ん中から変える」Classi加藤理啓氏の思い

2017年12月28日(木)16時30分

日本の未来を担う子供のために Wittayayut-iStock.

AI新聞から掲載

「社会に大きなうねりを起こしたいのならど真ん中のど真ん中を攻めろ。ものすごい逆風を受けるだろうが、ど真ん中から逃げるな」(ソフトバンク孫正義氏)。ソフトバンクで同氏の薫陶を受けたClassiの加藤理啓氏は、孫氏の言葉を胸に、学校という「教育のど真ん中」に狙いを定めた。創業3年にして全国の高等学校の40%を超える2100校(生徒数で80万人以上)が既にClassiを有料で導入。そしてこのプラットフォームにAIを導入することで、ど真ん中の教育改革をさらに加速させたいと言う。

──Classiってどんなサービスですか?

加藤「一言で言うと学校教育のプラットフォームです。大きく3つの機能があります。1つは、宿題のパーソナライズ機能。教師をアシストする形で、生徒一人一人の学力(到達度)に合った宿題をレコメンドする機能の拡充を目指しています。2つ目は、コミュニケーションツール。企業で導入が進んでいるSlackのようなメッセージングツールの学校版です。生徒がグループになってプロジェクトを進める際などに、スマートフォンで帰宅後も連絡を取り合えるようになっています。3つ目は、いろいろなサードパーティのアプリを乗せることができるプラットフォームです。現在、英語の発音や流ちょうさを音声認識でリアルタイムにチェックしてくれるアプリや、部活の動画を簡単に編集できるアプリなどが搭載されています」

──どれくらいの学校に導入されているのですか?

加藤「全国の高等学校の40%超に当たる約2100校に導入いただいています。あとは中学が約500校、小学校が約500校、それぞれ参加していただいています」

──ものすごい数ですね。そもそもどういう理由で、学校教育向けのICTサービスを始めようと思ったのですか?

加藤「ソフトバンク時代に新規事業を担当していました。日本が抱える課題には、労働人口の減少、医療費の高騰、教育などがありますが、教育だけが有効な打ち手となるサービスがあまりないように思えたんです。また自分の親、祖父、曾祖父が全員教育者だったこともあり、自分の残りの人生を教育に賭けたいと思うようになりました」「それとショッキングな統計を目にしたことも、私を教育に駆り立てました。その統計とは、1つは、高校生の5人のうち4人が『自分や将来に希望や自信を持てないというものです。そしてもう一つは、中学生の6人に一人が年収125万円以下の貧困層、という数字です」。

──それはショッキングですね。5人のうち4人が、将来に希望を持てないって、悲し過ぎますね。

加藤「そうなんです。貧困層は母子家庭も多く、お母さんは一生懸命働いて経済的には子供を支えています。ただ子供にかまってあげる時間がない。その結果、勉強の習慣を身につけることができなくなるケースが多いようです。そうした課題もテクノロジーで解決できるのではないかと考えたわけです」

──でもどうして学校教育なんですか?

加藤「孫正義が、社会を変えるような大きな変革のうねりを起こすには、ど真ん中のさらにど真ん中へ行け、とよく言うんです。ど真ん中ってやりにくいんですよ、抵抗勢力も多くて。でも端のほうで小さく成功しても、世の中は大きく変わらない。なので孫さんは、真ん中から逃げるなってよく言ってるんです。それで教育のど真ん中のそのまたど真ん中ってどこかって言うと、学校だと思ったんです」

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story