最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
【単独インタビュー】LGBTQ の米国オレゴン州知事誕生!コロナ前には戻らない。今求められる『地域の新しい姿への変化』とは?
| オレゴン州の課題は、全米都市圏共通の問題。ホームレス予備層と生活困窮者の増加
ホームレス問題は、米国主要都市の大きな問題となっています。リーマンショック後から増加傾向のところに、追い打ちをかけたパンデミック。
『シェルターや施設の拡大。それに付随する人的支援の必要性。想像を絶する数のメンタルヘルスを抱える人。親やパートナーによるDVから逃げ隠れている人。この部分のサポートを見落とすと、ホームレス問題はループ化に陥ります。』こう、著者が書いたのが2021年年末*。
このような現下、就任初日にはさっそく非常事態宣言を発令。
年間3万6千戸(現在より80%増)の新規支援住宅建設を求める州知事令に署名して動き出しました。
1年以内に、1,200人強の路上生活者を整ったシェルター生活に移行する。その目標のため、1億3,000万ドル(約166億2,400万円)の援助プログラム予算を通常州議会に提案すると述べます。
この予算で、コロナ禍で職を失ったシングル・ペアレント、家賃を払いきれずにいる生活困窮者、現在家を失う危機にあるホームレス予備層もカバーするとのこと。
「路上生活者をこれ以上増やさないためにも、この取り組みは州にとって必須プロジェクトなのです。
このことで、納税者の暮らしと安全も守ることができる。そんな仕組み作りを行います。」
非常事態を宣言することで、州政府は納税者の資金の使い方。さらには、州の土地利用規則の実行方法について柔軟に対応ができます。
とはいえ、建築資材や労働人材不足という現状の中で、どのように地方自治体や協働民間企業が目標を達成していけるのか。具体的な今後の策に、多くの人々が注視しています。
| まずは、州内の経済の安定化。国際貿易、そして日本への対応は...
「主要都市であるポートランド市が健全で経済的に繁栄すれば、オレゴン州全体がその恩恵を受けます。
しかし、ブラックライブズマター時の破壊行為~コロナ禍のダウンタウンを中心とした町の停滞。それに影響されたビジネスの廃業や低迷。問題が長期化する上に覆いかぶさるような物価高騰。
新州知事として、ポートランドや近郊市の家庭や企業が苦しんでいる姿を、ただ傍観しているわけにはいきません。」
経済学的にみると、他州に比べるてコロナによる雇用喪失から早く回復したオレゴン州。しかしこのままだと、景気後退に向かう可能性が高いと警告されています。
このような状況下、今議会で、任期2年間の予算を立てることは最大の議題。
例えば、インフレ削減法とインフラ・雇用法を通じて、米国連邦政府の資金を活用。そこから、新しい雇用の創出、気候変動の緩和、州の半導体産業の成長、経済への資金投入の促進。
それにしても、ここまで話を聞く限り国際貿易という言葉は一切聞こえてきません。
やはり新州知事の過去の働きからに見ても、人権問題、社会の仕組みの改善といった分野に長けている方。国際関係や貿易分野での経験はほぼ無いようです。
そこで一歩踏み込んで、国際貿易、特に日本との関係についてストレートに聞いてみました。
「前州知事から引き継ぐ形で、多種多様な日系企業の誘致。良き関係を築いている輸出入と拡大に力を入れていきます。
農産物の貿易は、物価高騰による影響もありますが、引き続き州のブランドを広める。そして、さらなる関係作りを構築していくことを約束します。」というコメントにとどまりました。
正直、ちょっと気落ちしていると、「次回会う時には、もう少し先を見通せる余裕が出てくるはず。その時には、日本に関してのレクチャー。それも『未来に向けた情報を学ぶ内容』中心で。」とお願いされた著者。
このインタビューを通して、ふと、楽天の社長がテスラを起こす前のイーロンマスク氏について語った内容が重なり合いました。
| 政治の素人。だからこそ、業界の既成概念を超えて未来を作り出す
言ってみれば、彼女の強みとはアマチュア精神を持っていること。でも、ただの政治のセミプロということでは無く、わからない分野に関しては、その道のプロの意見を徹底的に聞く。そして、それを学習し取り入れ行動に移す。そこに変なプライドを持っていないのです。
良いことも悪いことも全て机に上げて。皆で前に進んでいこう、というスタンス。
今、通常の暮らしに劇的な変化が繰り広げられる私たちの生活。
新しい時代の未来を構想していくためには、その業界の既成概念にとらわれすぎることは、『足かせ』になります。第3者的に物事を観察し俯瞰する姿勢や視点が、さらに必要となる時だと感じます。
だからこそ、想像がつきにくい未来を作り出すためには、『物事の本質を見据えるシンプルなものの見方』が必要なのではないでしょうか。
最後に新州知事は、こう説きます。
「すべての住民、いや、住む場所や文化を超えた仲間としての皆さんにお願いがあります。
私たち行政は力を尽くします。同時に、行政だけでは出来ない部分が多くあります。真の変革と前向きな変化のため、皆さんの力と行動がどうしても必要なのです。
一人ももらすことなく、家庭や地域社会で安全だと感じられる場所。そんな地域を作り出すために、州知事として身を粉にして働きます。」
目まぐるしく、想像以上に速いテンポで変化を遂げていく私たちの環境と暮らし。
コロナ以前にとらわれたり、ましてや過去に戻ってべた塗り上書きなどせず。
2023年にふさわしい『新しい姿に変化していく』という必要性を感じます。
今までとは違う、ささやかな行動をきっかけとして、想像もしなかった新しい宝物にたどり着くかもしれません。
あなたにとっての今。2023年の小さな一歩は何ですか。
次回は、新州知事の3つ目の課題 『教育格差』について深堀り!国や地域の未来を担う子供。その根源となるのが広い範囲での教育です。特に、今問題となっているのが『生活困窮による教育格差、コロナによる登校拒否や心の問題』。子どものカウンセリングを担う地域NPOを交えて、最新スキルと情報をお届けします。2月中旬掲載です!
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
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協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)