最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
エシカル・チョコレート - ポートランド流『サバイバルへの階段』
| B2B、ポートランド・メーカーとの協働からの成功
運のよい事に、オープンして間もなく『グルメの町、オーガニック食材の町ポートランド』というムーブメントが全米に広がっていきます。特にクリエイティブ層を中心とする人々の間で、エシカル製品としての品質の高さと美味しさから、売り上げは右肩上がり。
「クリエイティブ層の顧客からの信頼を得られたのは、一つの目標だったから嬉しかった。それとは別に、実はもう一つ具体的な目標があったんだ。それは、地元ポートランドの食品関連の中小メーカーとコラボをして新製品をつくり仕上げること。
環境も重視した、自分達のビジネス理念と商品。それをもっと多くの人に分かち合いたい。その目的で、多くの時間をB2B* の開拓に費やしていった。
全米レストラン賞に輝いた地元のシェフ、グルメレストラン。有名なハンドクラフトのアイスクリーム店、ケーキ屋、焼き菓子専門店など。加工業者も含めて、自社ブランドチョコを使ってコラボ商品を協働で作り出す。より良い製品を作りながら、同時にその店の新製品やメニューを考え出すことに全力を注いで、ウイン・ウインになる提案を出していったんだよ。
中小企業あるあるの「マーケティング費用が無い」っていう嘆き。でもお金が無ければ、それに代わるクリエイティブで斬新なアイデアを出し合って協力していく。ポートランドの中小メーカーブランドは、こういう風にコラボを発展させていくという特徴があるよね。そしてそれが、地域の中小ビジネスの魅力となっているんだ。」
チャーリーさんのストーリーを聴いていると、彼が大好きだというレッドツェッペリンのギタリストの言葉をふと思い出しました。「自惚れることはない。それでもなお、多くのミュージシャンが『ベストなバンドだ』って認めてくれることは、素直なよろこびにつながる。」
本当の意味において、『自他ともに認める』作品を造り出し続ける。『転がり続ける石』のように、社会と共に回っている工夫を感じました。
| 現在のコロナ禍でのチャレンジと次のステップへのヒント
コロナが発生して以来、日本の中小企業やビジネスが苦境に立たされています。これは、アメリカでも同じです。
「想像通り、B2Bの売上は大幅に減ってしまった。収益にいたっては約70%の減少、利益本体は約10%の減少だった。この数字によって、自分達のビジネスがいかに余計な労力や金銭を費やしていたのか。そこが明確になったのは、逆に良かったと思っているんだ。今まで投資として考えていた事柄が、無駄というモノに変化を遂げた。そう明確に、確認できたんだから。
正直、これからの事を考えると不安は大きいよ。でも、ビジネスをより強い形に発展させるために、今やるべきことをひとつでも多く試していく時期だと頭を切り替えている。来る新しい時代のためにもね。」
自問自答をするように答えるチャーリーさん。コロナ禍で、中小ビジネスの生き残りと成長をかけて行っていることとは...。
① 持続可能商品を制作するという、ビジネスビジョンと一貫性を保ち続ける。そのためにも、コロナ禍中・後の社会を分析リサーチして、具体的に何をすべきなのかの計画を立てる。
② これからの時代に見合った、新ビジネスモデルケースを自己学習する。その中から、自分の経営スタイルにあったツールを探し出す。
③ これだと思った事柄には、勇気を持って小さな『トライ&エラー』を繰り返していく。
④再雇用することを前提にして、従業員を一時的にあえて解雇する選択肢もありとする。失業保険受理したいという、従業員の気持ちも尊重する。
加えてこの時期、自分自身の心の切り替えを上手にすることも大切だと語ります。
「今はとっても辛いこの時期。それでもやっぱり、自分達が今まで行っていた持続可能な働き方、エシカルを広める働きは継続しなくてはいけない。そのために、『ノー』と言うべき時には、小さな声でも言い続けることは必要なんだ。勇気がいることだけどね。」
新譜を発表し続けるミュージシャンのように、作品に対してのトライ&エラーを繰り返す。新たなモノを作り出していくチャーリーさんのロック魂とビジネスとは、きっと無関係ではないはずです。
今、日本でも注目のことばとなっている、エシカル製品とエシカル消費。
どの分野においても、地球環境の本質は、消費する目的への配慮そして個人と社会の尊重にあるのではないでしょうか。
暮らしの中で、ほんの少しだけでも進むために。あなたは今日、なにがしたいですか。
「本、コト、ときおりコンフォートフード」
チャーリー|he/him|ウッドブロック チョコレート 代表
アーバン・アウトドアの町、自然からの贈り物
町中にも多くのトレイルがあることで有名な、ポートランド。その日のコンディションによって、違うトレイルを試してみるんだ。ウオーキング最中には、『食することが可能な物』を調べ探しながら歩くことも楽しみの一つ。ハックルベリー、真っ赤な野イチゴ、マイクログリーン。鳥の声を聴いたり恵みの豊かさを感じると、環境を守っていくことの大切さを再確認できる。それ以上に、創作の源にも繋がるから貴重だよ。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)