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ヴィズマーラ恵子|イタリア

メローニ首相がキングメーカー、EUの将来に重大な影響を与える可能性

Shutterstock- Matteo Bartolini

5年ごとに実施される欧州議会選挙が、2024年6月6日~9日と迫ってきている。
中道勢力と極右勢力の間で綱渡りをしているイタリア・メローニ首相だが、EUの将来の政治的進路に重大な影響を与える可能性がある人物であるという。

イタリアのジョルジア・メローニ首相は、6月の欧州選挙を前に、なくもないキングメーカーとして紹介されている。
キングメーカーとは、政治権力者の人選を左右する実力を持つ人のことをいう。

メローニ首相は、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の欧州人民党グループ(EPP)と、欧州で極右団体であるアイデンティティーと民主主義(ID)に所属するフランスのルペン氏の両方から熱烈なラブコールを受けている。

今、EUでメローニ首相がどちらと手を組むかの動向に注目が集まっているのだ。

フランスのマリーヌ・ル・ペン氏は26日(日曜日)、イタリア紙コリエーレ・デッラ・セーラに対し、「欧州議会の右派政党を極右スーパーグループに統合するためにメローニ氏の支持を得たい」と語った。

現在、イタリアの政党はアイデンティティと民主主義(ID)グループとメローニ首相が所属する国家主義的な欧州保守改革(ECR)グループに分かれている。

極右指導者のルペン氏は、メローニ首相について、「今こそ団結すべき時であり、それは本当に有益だ。もし団結できれば、我々は欧州議会の第2会派になるだろう。このような機会を逃すべきではないと思う。」と、協力を呼びかけ、「両国の主導権を取り戻すことを含め、基本的な問題では彼女と私は意見が一致していると信じている」と述べている。

フランスにおける極右政党は、6月6日から9日までの欧州議会選挙で、好成績を収めると予想されているが、特にロシアのウクライナ侵攻をめぐって、フランス国内政党の多くが大きく分裂している。そのため、どの政党が国境を越えた政治グループと協力できるのかについては依然として大きな疑問が残る。

ルペン氏の真の目標は、ズバリ、"次期フランス大統領になる本当のチャンスを得たい"といったところであろうか。

メローニ首相へのアプローチは、おそらく最大の成功のチャンスをもたらすものであることを彼女は良くわかっている。

ルペン氏の極右政党である国民連合(RN)は、世論調査でリードしており、6月の決選投票ではフランスの得票の3分の1を驚異的に獲得する可能性が出てきた。
同党は最近、より急進的で親ロシア的なAfDとの同盟を打ち破り、伝統的な右派に近づくという明確な試みとして欧州懐疑論の姿勢を軟化させた。

一方、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長からも中道右派の欧州人民党グループ(EPP)との連携を打診されているメローニ首相。

ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州連合の執行機関である欧州委員会の指揮を執る二度目の任務を確保するために、メローニ首相の党、イタリアの同胞の支援を目指している。

メローニ首相は、右派のどの政党とも協力する用意があると応じ、激しい欧州懐疑派の選挙運動を経て、2022年にイタリアで権力を握って以来、親EUと親ウクライナを示しており、欧州人民党(EPP)については、信頼できるパートナーにしていると述べた。

6月の欧州議会選挙に先立つ世論調査によると、先週アイデンティティと民主主義(ID)から除名されたドイツのための選択肢(AfD)を除いたこれら2つのグループは最大144議席を獲得する可能性があり、統一すれば中道左派を上回る可能性がある。
そしてリベラル派が議会で第二の政治勢力となる予想だ。


| フォン・デア・ライエンとルペンの間でヨーロッパの交差点にいるメローニ

ルペン氏とフォン・デア・ライエン氏の両方が、メローニ首相に手を差し伸べている。
しかし、メローニ首相はどちらか一方しか選ぶことができない。

フォン・デア・ライエン氏は、歴史的に親ロシア的な姿勢をとってきたルペン氏の国民連合(RN)を明確にブラックリストに載せ、同党を「プーチンの操り人形」と呼んだ。
5月初旬には、伝統的な同盟者である中道左派の社会主義者・民主党(S&D)、リベラルな欧州再生グループ、緑の党はいかなるレベルにおいても極右とは決して同盟しないことを誓う宣言に署名している。

また、フォン・デア・ライエン氏は、極右政党や急進政党との正常化、協力、同盟も断固として拒否するよう求めた。

もし、メローニ首相が、フォン・デア・ライエン氏の「EU政策を直接共同指揮しましょう」という誘いに応じた場合は、メローニ首相はルペン氏やオルバン氏らを諦める以外に選択肢はない。

政治的な観点から、ルペン氏とフォンデアライエン氏、2つの選択肢は必ずしも矛盾するものではないように思えるが、メローニ首相が、ルペン氏と協力して欧州議会でより強力な極右グループを形成し、この新たな連立政権の一部がフォン・デア・ライエン氏率いる連立政権に支援を与えるという可能性は十分にあり得るだろう。

政治学者のニコライ・フォン・オンダルザ氏によると、極右大連立グループは、9月中旬に予定されている「次期欧州委員会委員長選挙」に関する議会の投票後に結成される可能性もあり、これによりフォン・デア・ライエン氏は、メローニ首相のような伝統的な中道派右派のパートナーや左派の支持も当てにできるという。


| ドイツにおける極右の弱体化はEU議会選挙に影響するのか

経済成長がほぼゼロであるにもかかわらず、依然としてEUのGDPの4分の1を生み出すドイツ。
EUで最も強力な国、ドイツにおける欧州選挙は、排外主義と反西側の傾向に関連した一連のスキャンダルと、左翼連合中枢内の内部摩擦によって極右が弱体化したことが特徴である。

数百万人の外国人をドイツから追放するという極右計画に反対する昨冬の街頭デモと、ドイツのための選択肢(AfD)党首マクシミリアン・クラ氏とナンバー2のペトル・ビストロン氏を巻き込んだロシアと中国に有利な政治腐敗の告発が続いたことで、支持率が8%低下したという。

先週、最有力候補マクシミリアン・クラ氏が、過激派ナチス親衛隊の責任を相対化し、「全員が犯罪者ではない」という発言をしたことを理由に、アイデンティティと民主主義(ID)会派から除籍された。

メローニ首相の政権パートナーであるサルビーニ副首相兼インフラ大臣とルペン氏は、アイデンティティと民主主義(ID)会派に所属している。

サルビーニ氏の同盟(Lega)とヘルト・ウィルダース氏率いるオランダ自由党(PVV)も擁するアイデンティティと民主主義(ID)は、以前、新議会でリベラル派に次ぐ第3の政治勢力として有力視されていたが、ドイツのための選択肢(AfD)の除名は、下院で17議席の削減を意味する可能性があり、最新の世論調査ではメローニ首相のEU保守党(ECR)がリードしている。

メローニ首相は、イタリア国営放送局RAIのテレビインタビューで、新欧州議会で他の政治勢力と連携する可能性に関して、「私の主な目的は、近年、政権を握ってきた多数派に代わる大多数派を築くことです。言い換えれば、ヨーロッパで左派を野党に追い込み、中道右派の多数派をつくるのです」と、左派の多数派の一員となるつもりはないと明言している。

メローニ首相にとっては、ドイツのための選択肢(AfD)の離脱により、むしろ、右派の再編の可能性が開かれたと言えよう。

欧州議会の2つの右翼派閥の合併は遅かれ早かれ起こるだろう。

最新の予測では、 アイデンティティと民主主義(ID)が68議席、EU保守党(ECR)が71議席で、720議席の議会に139人の議員がいるとされている。
ドイツのための選択肢(AfD)は17議席獲得の見込みで、ハンガリーの無所属政党フィデスは現在12人の欧州議会議員を抱えている。
これらを合わせると、現在は分裂している極右政党が165議席以上を獲得する可能性もある。

さてどうなるか、欧州議会選挙 2024年6月6日~9日

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著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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