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ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリアが嫌がるEUの包装廃棄物新規制、スーパーの棚から消えるもの

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欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)は、2022年11月に立法手続きが開始される包装および包装廃棄物に関する規制、いわゆる包装及び包装廃棄物規則(PPWR)の修正案を2023年11月22日に可決し承認した。
使い捨て包装、特にプラスチック消費量の削減のために、再利用を支持するもう一つの重要なステップが設定された。

この文書には、包装材の再利用やリサイクルを容易にし、不必要な包装材や廃棄物を削減し、リサイクル製品の使用を促進するという新たな義務が含まれている。

2009年から2020年の間に、EUで生成される廃棄包装の総質量は、+1,300万トンに達し20%増加。
EU加盟国間で大きな差はあるものの、2020年には包装廃棄物は7,900万トンに達した。一人当たりでは177kg、2009年は150kgだった。

紙とボール紙が最も一般的な包装廃棄物 (41%)であり、プラスチック (19.5%)、ガラス (19%)、木材 (15%)、金属 (5%)と続く。
2009年以降で最も増加率が高かった廃棄物は、プラスチック (+27%) と紙とボール紙 (+25%) で、それらの包装廃棄物のリサイクル率は、2009年の63%から2020年の64% へとわずかに増加した。

2016 年以降増加が止まり、その後、2011年の水準に戻った。
欧州連合内でのパッケージング生産は、3,550億ユーロ(約5兆6,110億円)の売上高を生み出している。

旧包装および包装廃棄物指令 (PPWD指令 94/62/EC) では、包装廃棄物の発生を防止し、包装の再利用、リサイクル、およびその他の形式の包装廃棄物の回収を促進するための措置であり、欧州市場に投入されるすべてのパッケージが満たさなければならない要件が定められている。
すでに確立しているが、その後もヨーロッパはさらに前進した。


| 欧州グリーンディール

欧州グリーンディールは、人々の幸福と健康の向上を目的として、 欧州は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする気候中立達成を目標としている。
新しい循環型経済へ向けた産業戦略の行動計画の一環として、欧州委員会は2022年11月に包装及び包装廃棄物規則(PPWR)の見直しを発表した。

この取り組みの目標は、2030年までにすべてのパッケージを経済的に実行可能な方法で再利用またはリサイクルできるようにすることだ。

パッケージングの再利用とリサイクルを確実にするための必須要件を強化し、リサイクルされた内容物の採用を促進し、要件の強制力を向上させる目的を持っている。

見直し修正案には、過剰包装問題への対応や包装廃棄物の削減にも取り組んでいくということが盛り込まれており、多くの企業は、現在、プラスチックの使用を大幅に削減するか、完全に廃止するという目標を設定している。
レゴのような巨大企業でさえ、象徴的なブロックへのプラスチックの使用を中止する予定だ。


| 包装に関する新しいEU規制とは

包装廃棄物指令 (Packaging and packaging waste directive)
欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)の決定により、包装廃棄物の削減の最終目的を達成するための"体系的な解決策"が可能になった。

まず、包装材の最小リサイクル含有量目標を削減した。

たとえば、使い捨て飲料ボトルの場合、PET製の接触に敏感な包装の目標30%が削除された。
使い捨てプラスチック飲料ボトルを除く、PET以外のプラスチックで作られた接触に敏感な包装の目標10%は7.5% に引き下げられた。

承認された別の修正案では、2030年1月1日までに、大型家庭用電化製品を製造するオンラインプラットフォームを含む経済事業者からの全パッケージの50%が再利用可能でなければならないと定められている。

段ボールも再利用の対象に含まれる。
その他、物品輸送用の軟質プラスチックフィルムも再利用の対象となる。

これは、EU加盟国内またはEU加盟国間で商品の輸送時に現在使用されているプラ​​スチックフィルムが2030年までに実質的に禁止されることを意味する。

その他の承認された規定には、例えば、包装材のリサイクル含有量の最小値に関する具体的な目標、食品と接触する包装材に意図的に含まれるポリフルオロアルキル化合物(PFAS)およびビスフェノールA物質の禁止、一部の材料の分別収集に関して、2030年までに達成されるその他の目標が含まれている。

使い捨て包装の販売制限や材質を問わずレストランでのすべての使い捨て包装の禁止を定める修正案も承認された。

使い捨て包装の制限により、生鮮食品用のプラスチック包装や、非常に軽いビニール袋、シュリンクラップ、ホイルなどの束ねた包装が禁止される。

いくつかの例外や制限はあるが、もし新しい規制が採用されれば、例えば生の果物や野菜の使い捨て包装、調味料の使い捨て包装、 HORECA(ホテル・レストラン・カフェの略称)の セクターでは、敷地内で充填消費される食品や飲料用の使い捨てパッケージ、またはホテル用の小型の使い捨てパッケージは禁止となる。

この規制を発効して2年以内に、飲食業界の持ち帰りサービス事業者は、顧客が自宅から持ち込んだ自分の容器を使用できるようにする必要もある。

生物由来のプラスチック原材料の包装材への使用に関する目標を設定する可能性を評価する報告書の発行期限は、必須のリサイクル内容目標にカウントされ、 2025年12月31日に設定される。

特に欧州委員会は、バイオプラスチックを使用してリサイクル含有量目標の最大50%を達成する可能性を検討したいと考えている。


| 包装に関する新しいEU規制に、イタリアは反対している

イタリアは、包装廃棄物に関するEUの提案に猛烈に反対である。

規制案は、使い捨て包装を禁止し、リサイクルではなく再利用を促進し、原料から最終処分まで、包装の寿命サイクル全体に対する要件を確立することを目的としている。
しかし、この再利用目標は、高いプラスチックリサイクル率などを誇るイタリアは、その規制案を批判し自国の成功モデルに対する威厳であるとみなしている。

プラスチックの使用中止するよりも、プラスチックを上手にリサイクルする方法を重視してイタリアが取り組んでいるのが、プラスチック再利用の研究である。


欧州でごみゼロを目指す非営利団体ゼロ・ウェイスト・ヨーロッパの創設者でディレクターのジョアン・マーク・サイモン氏は、EU規制草案を「再利用政策の完成に向けた顕著な一歩」と定義した。しかし、この動きには「抜け穴がある」とも言う。

「プラスチックを使って目的の半分を達成できるのであれば、循環的思考をパッケージングの生産に組み込むのは意味がない。」と述べている。

大手プラスチック・ヨーロッパは、異なる意見を持っている。
バイオプラスチックの重要性の認識を称賛したが、「リサイクルプラスチックの他の目標も必要である。そうでなければ、リサイクルされた内容の目標を薄める方法として、包装材にバイオベースのプラスチックの使用を許可するだけになる」と、主張している。

また、「サプライチェーンの中断、輸送業者、そして最終的には消費者のコストの上昇をもたらし、安全性に悪影響を及ぼす」と、欧州の措置を批判している。


| イタリアが嫌がる規制

ジルベルト・ピチェット環境・エネルギー安全保障大臣からも、はっきりとした「イタリアはNOだ」という発言があった。

同氏は、「欧州議会の環境委員会での包装規制に関する投票は、われわれの懸念を裏付けるものだ。イタリアは、環境を保護し、循環経済の最先端の原則を確認しながら雇用を提供している。EUの目標を数年前より上回る革新的なサプライチェーンを守るために、すべての地域団体で闘いを続けていく。」と、述べた。

プラスチックをリサイクルする方法を重視するイタリアの研究では、良い成果を出している。そのイタリアモデルを強化するのではなく、それをあえて危険にさらすようなシステムに向けて歩み続けているようだと警鐘を鳴らしているのである。

工芸品と零細企業および中小企業の最も代表的なイタリアの組織であるコンファルティジャナート・インプレーゼによると、欧州委員会の文書と比較してさまざまな規定が緩和され、負担と義務の一部が軽減されていると明らかにした。

たとえば、コンファルティジャナート・インプレーゼのおかげで、零細企業は一部の義務を免除されている。
具体的には、HORECA(ホテル・レストラン・カフェ)部門に対する義務の一部と、プラスチック包装の最小リサイクル内容義務に関して、零細企業に対して免除が提供された。

しかし、コンファルティジャナートは、新たな再利用と再利用義務を国家レベルで実施することは問題が生じるだろうと予見しており、再利用が唯一の選択肢とみなされるべきではなく、すでに存在する積極的なリサイクルモデルに追加されるべきであると繰り返し述べ、この規則に関して懸念を表明している。

実際、コンファルティジャナートは、さまざまな国家的背景や、近年各加盟国が開発したリサイクルと収集システム、また、環境影響が十分に考慮されていないことを指摘した。


|包装に関するEUの新規制で、スーパーマーケットから消えるもの

この新規制について、イタリアのいくつかの業界団体、特に果物と野菜の分野からも反対意見が出ている。

包装制限を1kg以上の商品のみに設定すると、1kg未満の重さの袋入りサラダ、プラスチックバスケットに入っているイチゴ、チェリー、ミニトマト、プラスチック容器に入っているカットフルーツ、カット野菜、プラスチックトレイに入っているハーブ、オリーブ、プラ網袋入りオレンジなどは、スーパーマーケットの棚から消える危険がある。

イタリアの農業生産者団体コルディレッティは、「現状では衛生、保存、廃棄量は増え、消費の観点では減少し、健康にも危険な影響を及ぼすリスクもある。」と、述べている。

袋入りサラダから包装されたフルーツに至るまで、2023年上半期は果物で10%、野菜は6%増加し、第4の製品が今やイタリア人の習慣に深く浸透しているが、イタリア人の消費量は減少している。
またさらにそれが減る危険性があるとも言われている。

少なくとも現時点では、ワインだけは保護されており、新しい規則によって定められた制約から免除されている。
ワインボトルの標準化と軽量化のリスクは回避され、事実上マグナム形式だけでなく、バ​​ローロからアマローネなど偉大なイタリアの熟成ワインには重要であるボトルを一律に標準サイズ化したり軽量化することは排除された。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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