World Voice

イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

中東情勢の悪化でイタリアと他10カ国「シェンゲン協定、もうやめたい!」EU「移民が脅威であれば追放せよ」

Ivan Marc-Shutterstock

中東では、10月7日にハマスによって行われた1,300人のイスラエル人の虐殺をきっかけに戦争が勃発しており、爆発の危険が深刻である。

イスラエル軍報道官ダニエル・ハガリ氏によると、10月7日のハマスの攻撃以来、少なくとも306人のイスラエル兵士が殺害され、少なくとも203人のイスラエル国民と兵士がガザ地区でハマスに人質に取られている。
ハガリ氏は、イスラエル軍は人質の状況に関する情報を収集するため、過去24時間にわたってガザ地区を襲撃してきたと述べている。

ガザ地区からエジプトに入る唯一の道であるラファ交差点は現在も閉鎖されている。
不確かな情報ではあるが、米国、イスラエル、エジプト間の合意に基づいて明日開通する可能性があるとも言う。

また、国連人道問題調整事務所によると、ガザ地区の総住宅の25%、9万8千戸以上の住宅が、イスラエルによるハマス爆撃により破壊または損傷したと宣言された。
被害を受けた建物の中には、国連パレスチナ難民機関(UNRWA)が使用していた20棟を含む170棟の教育棟も含まれている。
国連は、853人の子供を含む合計3,478人の犠牲者と12,500人の負傷者を数えていると伝えている。

昨日10月18日(水)、アメリカ大統領バイデンはテルアビブでネタニヤフ首相と会談し、「病院を襲ったのはイスラエルではないようだ」と述べている。

この記事を書いている本日2023年10月19日は、 戦争開始から12日目にあたる。
今日までに、少なくともパレスチナ人 3,785 人、イスラエル人 1,400 人、人質203人が死亡した。
イタリアのマスコミは、「ガザのアル・アハリ病院で何が起こったのか?」を追跡し、イスラエル軍によって傍受されたハマス過激派による「聖戦ミサイル」発射ミスを証明している武装勢力の音声を公開したり、なぜイスラエルはまだガザで地上攻撃を開始していないのか?などという内容で報道をしている。

ハマスはイスラエル攻撃の際、北朝鮮の兵器を使用した可能性が高いと、FoxとUsaTodayはいくつかの分析と収集された証拠を引用してそれを報じた。
ハマスが使用する武器の中には、北朝鮮のF-7ロケット推進手榴弾やカラシニコフの派生型である北朝鮮の58式小銃などがある。


ドイツのショルツ首相は17日、イスラエルを訪問した。その後、ガザ地区への支援物資の搬入が注目されている隣国エジプトも訪れることになっていた。

その際、テルアビブからカイロに向かっていたドイツ国営飛行機が急遽降機を余儀なくされるという、とんでもない緊急事態と緊迫した映像が流れてきた。
ハマスが空港にロケット弾を撃ち込んだからだった。
ショルツ首相は車でシェルターへ非難し、ドイツの代表団職員たちは空港滑走路の地面に頭を抱えて伏せている映像だった。

欧州諸国の他の国々でもいろんな事が起きている。

フランスでは、

ルーブル美術館が電子メールによる「爆破予告」を受け、全員避難。「安全上の理由から」閉鎖された。その次の日、今度はベルサイユ宮殿が「爆破予告」を受け、同じように全員非難で閉鎖を余儀なくされた。ベルサイユ宮殿は、年間1,500 万人の訪問者数で、フランスで最も訪問者の多い観光名所の1 つである。
また次の日、フランス国内の少なくとも10の空港に「爆破予告」があり、リール、リヨン、ナント、ニース、トゥールーズ、ストラスブール、ボーヴェなどの空港が標的となり閉鎖した。この日は、ベルサイユ宮殿も5日間​​で3度目の「爆破予告」を受ける事となった。19日、空港に爆弾警報をした未成年者ら18人を逮捕したと、ダルマニン内務大臣がテレビで発表した。爆破予告は虚偽の脅迫であったが、14の空港が麻痺した。十数の空港が封鎖され、飛行機は欠航・遅延した。


ベルギーでも

「爆破予告」によりオステンド空港から避難が行われた。
10月16日(月)、首都ブリュッセルでスウェーデン人2人が殺害され、1人が重体の事件が発生した。翌日、逃走していた犯人が警察と銃撃戦になり、容疑者の男アブデサレム・ラソウド(45歳チュニジア人)死亡。
イスラム過激派化はすでに諜報機関に知られておりマークされていた人物であった。
この男は、犯行声明をSNSに投稿していた。「イスラム国に触発された、異教徒であるスウェーデン人を3人殺害した。イスラム教を冒涜したことへの復讐だ」と主張する容疑者の動画が投稿されている。
スウェーデンではここ数週間、反イスラム武装勢力によってコーランのコピーが数回燃やされたり踏みつけられたりしたことを受け、攻撃の動機は復讐である可能性が浮上した。
しかし、検察当局は、今のところ男がパレスチナのイスラエルとハマスの紛争に関与している証拠はないと述べた。

このベルギー・ブリュッセルでスウェーデン人2人を殺害した襲撃犯は、チュニジア人のアブデサレム・ラソウード(45歳)、不法移民の人身売買で知られる不法移民だった。

ラ・リーブル紙によると、現在他に2人が警察から指名手配されているという。死亡した襲撃犯アブデサレム・ラソウードは2016年からイタリアのジェノバとボローニャに数年間在住していた事があったと判明した。
彼がジェノバ に滞在していた理由は、北イタリアのチュニジア総領事館がそこにあるという合理的な事実と関係がある。
その後の調べで、2011年1月にイタリアのランペドゥーザ島に上陸した後、不法入国でポルト・エンペドクレに移送され、そこで撮られた証明写真が残っていた。

イタリアでの亡命申請は却下された。犯罪歴があったからだった。

アブデサレム・ラソウードは、しばらくスウェーデンに住んでいたが、国外追放されてブリュッセルのスハールベーク地区に移住し、そこで家族と暮らしていたこともわかっている。

2019年11月にベルギーへの亡命申請を行ったが、翌年2020年10月に申請は却下されたと、ベルギーのアレクサンダー・デ・クルー首相との記者会見で法務大臣ヴィンセント・ヴァン・クイッケンボーン氏が、「容疑者は2019年に我が国への亡命を申請した。人身売買、不法滞在、国家安全を危険にさらすなどの不審な行為で知られていた。亡命希望者のためのセンター(フェダシル連邦受容局の受付センター)にいたこともなく、ブリュッセルにいても住所不定で所在地がなく、そのため警察は彼を追跡できなかった。」

また、ニコール・デモア難民担当大臣は、「2021年2月12日に地方自治体の国民登録から正式に抹消されたため、帰国を手配しようとしたが、彼の居場所を特定することはできなかった。」と、説明した。

アブデサレム・ラソウード容疑者はすでに法執行機関に知られており、人身売買の容疑がかけられていた人物で、"聖戦のために紛争地帯へ出国したいと考えていた"しかも、"過激化していたことを示していた"。その情報は検証されたが、男は具体的に何もすることができなかったようで、差し迫る過激化の兆候はなかったという理由で、

いわゆる、危険人物を野放し状態だった。


殺人者アブデサレム・ラソウードは、2022年6月に警察の画面に再び現れ、彼はベルギーの首都のモスクにいると言った。
彼は周囲に溶け込めず、目立たず、人を脅迫するなどトラブルをたびたび起こしている。被害者の説明によると、彼は母国のチュニジアでテロの罪で有罪判決を受けた人物であるともいう。

捜査当局は検査を行い、彼がチュニジアの法廷で一般的な犯罪で裁かれていることを確認し、尋問のために彼を召喚することを決定した。
アントワープ連邦司法警察は10月15日(日)、10月17日(火)に予定していた。

この事件、攻撃の翌日が10月17日火曜日だ。
前日16日に、イープル大通りでカラシニコフで発砲し、スウェーデン国民2人を殺害した。

彼は2人のスウェーデン人をターゲットに選んだ。考えられる動機は、
襲撃後に公開されたビデオの中で、犯人はユーロ2024の試合(その後中断)が行われていたベルギー対スウェーデンの試合が行われていたスタジアムへ向かう意向を表明していた。

被害者2人はスウェーデン代表チームのシャツを着ていた。

アブデサレム容疑者は襲撃前に撮影されたビデオの中で、スウェーデンでコーランが焚かれていることをほのめかした。別のビデオでは、目出し帽を被った45歳の男性が、「アッラーの書は越えてはならない一線」であり、そのためには自らを犠牲にする覚悟があると語っている。ここ数カ月スウェーデンで焼かれたコーランのテキストへの言及である可能性がある。


同日、イタリア・ミラノでは、テロを企てたとしてエジプト人2名が逮捕された。
清掃部門で働いていたエジプト国民とイタリアに帰化したエジプト人で、テロを目的とした犯罪教唆の容疑、そしてメローニ首相を殺害すると脅迫した容疑で逮捕された。
犯人の自宅の家宅捜査で、ISISへの忠誠を誓う書面が見つかり、戦争で亡くなったISIS組織幹部の未亡人妻への義援金という大義の偽名目でテロ組織へ資金提供をしていた事が判明し、欧州したパソコンからはプロパガンダとデジタル改宗を積極的に行なっていた事で容疑がかたまり、逮捕に至った。

| シェンゲン協定をやめたい欧州諸国

まず、シェンゲン協定とは、1985年6月14日に初めて締結された条約で、ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する協定である。
シェンゲン協定に参加している国間の国境やパスポート管理を廃止し、共通のビザ政策を実施することが提案された。シェンゲン圏内での移動・旅行が自由にできる。

シェンゲン情報システム (SIS) が導入され、システムは強化アップグレードされ、指名手配者の逮捕、行方不明者の保護、違法または盗難品の押収など新しいカテゴリーアラートも追加された。このシステムには、入退場・拒否に関するデータも取得している。 国境を越える非EU国民 シェンゲン圏の国々が登録されている。

シェンゲン協定非加盟国:イギリス、アイルランド、ブルガリア、キプロス、ルーマニア

※現在、日本国籍を有する人は、観光目的のシェンゲンビザの申請が免除される第三国国民にあたる。シェンゲン協定加盟国において、シェンゲンビザを申請することなく90日間まで滞在することができる。しかし、2024年に欧州連合(EU)が導入する新制度により、ヨーロッパへの旅行形態が変わる。

ETIAS(エティアス)と呼ばれる欧州渡航情報認証制度は、ヨーロッパ渡航時にシェンゲンビザを必要としない国からの外国人旅行者を追跡するための自動電子システムで、2024年より、日本人がETIAS利用国へ渡航する場合、到着時に承認されたETIASを所有している必要がある。


イタリアは、シェンゲン協定加盟国であるスロベニアとの国境で、シェンゲン協定を停止して欲しいと願っている。

イタリア・メローニ首相 要求:「スロベニアとの国境での停止は必要だ。その責任は私にある」

欧州委員会委員長フォン・デア・ライエン 回答:「そのような場合には強制送還が義務付けられている、シェンゲン協定の停止ではなく本国送還せよ」


そこで、イタリアはスロベニアとの国境に規制を再導入した。

「シェンゲン協定の停止は、中東情勢の悪化、バルカンルート沿いの移民の増加、そして何よりも国家安全保障上の問題により必要であり、これについては私に全責任がある」とメローニ首相は説明した。

フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州では、年初以来、1万6千人が不法入国したことが確認されている。イタリアの決定はベルギー・ブリュッセルでのテロ攻撃の2日後、ヨーロッパで緊張が高まっている時期に下された。

その後、イタリア政府は慣例に従ってこの決定を欧州委員会と各国に伝えた。
規制は土曜日から10月30日まで再導入され、延長される可能性がある。

ポーランド、チェコ共和国、スイスとの国境でも10月25日まで、オーストリアとの国境では2024年5月11日までこの措置を維持する。フランスは、テロの脅威と国境の状況を理由に、4月30日まですべての国境に沿った規制を再導入した。

シェンゲン圏内の合計11 か国が国境管理を再導入している。
イタリアに加えて、オーストリア、ドイツ、フランス、チェコ共和国、ポーランド、スロバキア、スウェーデン、デンマーク、スロベニア、そしてEUに加盟していないノルウェーも含まれる。

中東紛争が欧州の安全保障に及ぼす影響については、ルクセンブルクで会合する27カ国の内務大臣によって議論される。

もう一つの中心テーマは本国送還の問題であり、これはスウェーデンのクリスターソン首相とベルギーのデ・クルー首相による襲撃の犠牲者を追悼する式典で強調され、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も
「安全上の脅威とみなされ本国送還命令を受けた人々は現在、自発的に退去するよう求められる。これを早急に変える必要がある。」と、説明した。

移民に関する協定や本国送還指令では、こうした場合の追放はすでに義務付けられているが、EU議会はこの条文に関する交渉上の立場をまだ策定していないため、進展はない。

2023年後半EU議長国のスペインは、予防的かつ積極的な二重のアプローチを提案している。
それは、既存のツールを活用するためのEUの代表団や機関の現地関与の拡大と、バングラデシュ、エチオピア、イラク、セネガル、ガンビアなどの主要国との本国送還に向けた協力を強化するための追加措置を特定することである。
しかし、中長期的には資金が必要だ。


| イタリアの問題、「異なる」難民の動き

現内務省長官マッテオ・ピアンテドーシ氏は、ここ数カ月すでにバルカン半島からの到着者数の増加に警鐘を鳴らしており、トリエステ州とゴリツィア州、そして全土のスロベニア当局に対しても管理を強化するよう命じた。
コペルとノヴァ・ゴリツァの国境(2019年の合意に基づく)は、200人の難民をカスに即時移送するよう命じた。
この措置は、バルカン半島ルートを地中海ルートと受け入れの点で同じレベルに引き上げ始める可能性がある。

バルカンルートは「新たな移民の動き」であり、緊急事態だ

不法移民がカルソ山脈を徒歩で越えて、トリエステに到着している。
今年は、既に5,500人以上が北のフルセンターに到着している。
どう見ても1,500キロメートル以上を超える絶望的な旅である。2022年には12万8,000人以上の人々が命の危険を冒して移動した。
昨年8月の時点、ウーディネ県のグラディスカ・ディゾンツォの亡命希望者受け入れセンター(カーラ)は、本国送還者収容センター(Cpr)も併設している施設で、予想200人に対し600人の超過密を記録していた。
衛生的健康状態が緊張の新たな原因となっている。

状況を解決するために、この人々を半減することが決定され、当時の内務大臣ルシアナ・ラモルジェーゼは、300人の亡命希望者をフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州やその他の地域のレセプションセンターに移送するよう命じた。

人道団体の報告にもあるように、その12か月後、深刻な暴力事件の発生を受けて施設を閉鎖するようグラディスカ市議会の内務省に超党派の要請があったにもかかわらず、同じシナリオが再発した。
それが、前例のないシチリア海岸への緊急着陸となり、その結果、亡命希望者受け入れセンターは麻痺。

特に地中海からの難民を優先的に同行させるイタリア全土の臨時受付センター(Cas)は満員である。
少なくとも現時点では全く受け入れるスペースがない。


| イタリアにおける不法密輸業者

一方、内務省によると、2023年の初め以来、トルコ、ギリシャ、アルバニア、モンテネグロ、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナを経由して、すでに5,500人以上の移民がイタリアに到着している。また、その数はさらに増える可能性がある。

不法移民たちは徒歩でカルスト山脈を越え、クロゴール展望台などの小道をたどって、今度はトリエステに到着する。
500人以上の移民がトリエステでキャンプをしており、トリエステのディピアッツァ市長は度重なる抗議をしている。

彼らと密売業者の両方を特定し、何が起こっているのかを知るために、森にもカメラが設置された。

今年のデータを見てみると、8月15日までに4,850人の難民がスロベニアとの国境から到着しており、その65%はバングラデシュとアフガニスタンからで、去年の同時期と比較して57%増加と上昇している。

つまり、地中海ルートで起こっていることと同様に、2022年全体の到着者数が105,127人だったのに対し、2023年の到着者数は113,000人を超えたが、昨年の到着者数が9,476人だったことを考えると、バルカン半島からの到着者数も大幅に増加傾向にあることが発表されている。


バルカン半島からの不法移民の到着に関するシナリオはさらに悪化しており、一部の団体や文化仲介者(サンマルティーノ・アル・カンポ共同体、ワルド派ディアコニア、国際救済委員会など)が1月から7月にかけて実施した監視の結果、亡命申請をした移民は7,890人だった。昨年は 3,191件。

ほぼ全員が男性 (92%)、16%が未成年。
10人中7人がアフガニスタン人、次いでパキスタン人、バングラデシュ人、ネパール人、クルド人だ。
72%はイタリアに滞在したくないが、ただ通過するだけだと宣言した。
しかし、その意図は変わる可能性がある。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

Archives

このブロガーの記事

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ