イタリア事情斜め読み
ヨーロッパ圏のインフレは減速の兆候
| ユーロ圏ではインフレ率の減速の兆候
インフレはまだまだ終わらないのか?
ヨーロッパでは、インフレはピークに達した可能性があるというが、実際にはどうだろうか。
欧州連合の統計局であるユーロスタットの速報値によると、2023年1月のユーロ圏のインフレ率は12月の9.2%から8.5%に低下すると予想されていた。
個々の構成要素の中では、エネルギーの数値が優勢で12月の25.5%と比較して1月は17.2%。
イタリアのインフレ率は、12月の12.3%から10.9%に低下した。
インフレ率が最も高い国は、ラトビア 21.6%、続いてエストニア18.8%、リトアニア (18.4%) がある。
逆に、インフレ率が低いのはスペインとルクセンブルクで5.8%である。
2023年、イタリア人は物価と関税の値上げにより、1 家族あたり平均 2,435ユーロ(約34万2,750円)の打撃を受けるリスクがあると消費者団体(Codacon)が発表していた。
また、イタリア国立統計研究所(ISTAT) は、イタリアの全国消費者連合が発表したインフレに関するデータを処理し、人口15万人を超える地域、州都、地方自治体の増加のリストを作成した。
イタリアの物価高ランキング2位のロンバルディア州ミラノでは、物価が12%上昇し、インフレ率がイタリア全土では11番目に高く、平均的な家族の年間支出の増加は 3,258 ユーロ(約45万8千円)であると判明した。
一方、南イタリアのバジリカータ州ポテンツァではインフレ率は 9.2% で、1,817 ユーロ(約25万5千円)増加したという結果だ。
通常、イタリア人家族の生活費を見てみると、北イタリアは南イタリアに比べて物価が高く、特に食費が高い。
イタリア人が選ぶ、住みやすい街ランキングで毎年必ず上位に君臨しているボルツァーノという街は、15万人以上の住民が住む最も物価の高い都市のランキングで首位に立った。
ボルツァーノのインフレ率は +12.5% (2021年12月から2022年12月まで) で、イタリアで6番目に物価が高い数値で、年間ベースでは平均3,322 ユーロ(約46万7千円)に相当する、より高い追加支出であったという。
インフレの影響が最も大きく感じられたイタリアの都市ランキング
1位 ボルツァーノ、インフレ率 +12.5% で、年間3,322 ユーロ(約46万7千円)に相当する追加費用。
2位 ミラノ+12.4%で、年間3,258 ユーロ(約45万8千円)増
3位 トレント +12.3%で、年間3,219ユーロ(約45万2千円)増
4位 ラヴェンナ +12.8%、+3,093ユーロ(約43万円5千円)増
5位 ボローニャ +12%、2,993 ユーロ(約42万円1千円)増
6位 モデナ+12.3%、2,972 ユーロ(約41万8円千円)増
7位 ジェノヴァ +13.5%、+2,943 ユーロ(約41万円4千円)増
元々物価が安く生活費の増加額では北イタリアの他県とそんなに変わらないように見える8位のカターニアは、インフレ率だけを見てみると、その上がり具合が最も激動した街であった。
インフレ率は+14.7%、+2,918ユーロ(約41万円)増
それに次いで、9位のシチリア・パレルモもイタリアで2番目にインフレ率の大幅増加で+14.6%、2,899 ユーロ(約40万8千円)増。
10位 ブレシア+10.9%、2,874 ユーロ(約40万4千円)増。
そして、イタリアで最もインフレ率が低い都市はアオスタで+8.5%、 2,104 ユーロ(約29万6千円)増であった。
| 欧州中央銀行(ECB)は再び金利0.50%引き上げ
ECBは、2008年以来最高の3%に引き上げた。
変動金利住宅ローンの場合、分割払いは月額約40ユーロ増加することになる。
1年で約67,360円の増額である。
ECBの総裁であるクリスティーヌ・ラガルド氏は価格競争を止める治療法として、来月の3月にさらなる利上げ50ベーシスポイント上げる(0.5%)引き上げを決めた。政策理事会は、金利を一定のペースで大幅に引き上げ続け、中期的にインフレ率を2%までに抑える目標だ。
1月にユーロ圏ではインフレ率の減速の兆候が見られ始めて、8.5%に達した。イタリアではどうだろうか。
イタリアのインフレ率は前年比で10.1%。コアインフレ率は6.02%とまだまだ高い。
金利上昇で最もわかりやすく直撃するもので測定可能なものの1つとして、「変動金利住宅ローンの分割払いのコスト」がある。
その増加がどのように変化するかを推測し、シュミレーションができるMutuionline(ムートゥイオンライン) というサイトでイタリアの住宅ローンの平均額の例で見てみると、20万ユーロ(約2800万円)相当の不動産を購入するための14万ユーロ(約1,960万円)のローンの場合、30年の分割払いだとすると毎月約40ユーロ増加することになる。
1年で約67,360円の増額、10年満期だった場合は33ユーロ増加し、20年間は36ユーロ増加するという推測が出ている。
| イタリアはガス代 40%下がる
2月初めからガス代が40%カットされる。
政府は、第1四半期の高額請求に対応するために210億ドルを割り当てた。
予算法で示された措置を4月に更新する。
「2月の初めから法案を含め、ガスコストが約40%低下する可能性がある」
と、経済大臣ジャンカルロ・ジョルジェッティによって発表された。
彼は同盟政党の議員で、選挙運動中にも公約としてガス代のコストを下げると掲げていた。
イタリアのエネルギーネットワーク・環境規制機関(AREA)は毎月ガス料金を更新することになった。2023年より1ヶ月毎の料金が強化保護制度の対象者に通知される。2月2日にガス代の料金の更新が行われた。
ガス料金は毎月更新に変わったが、電気料金の更新は四半期ごとであるため、次回の4月まで待つ必要がある。
経済大臣:「高額法案に対する援助は3月31日以降も継続しますが、方式は異なります。物価の傾向は変化しており、下落が続くことを願っているが、対策を見直す必要がある。」と、政府が援助面でより効率的なメカニズムに焦点を当てる予定であるという。
以前の援助法は、緊急事態につき臨時的に導入したものであったが、最初の介入とは異なる方法で、消費量の少ない人への割引をするなど、価格を緩和するために4月1日から介入することを約束した。
システム料金または付加価値税の削減は、政府が介入して差額をカバーし、市民や企業の予算を圧迫しないように、特定のガス価格レベルまで補助金付きの関税に置き換えることができるという。
欧州レベルでも消費傾向に関してより柔軟で、エネルギー節約のためにもなる均質な措置を見つけることは議論されている。
請求書の費用は2つに分割する必要がある。
75~80%は州によって補助され、残りの25~ 30%については、消費者が節約を奨励するために市場金利を支払う。
これは、ドイツなど、欧州連合の他の加盟国ではすでに実施されている方法である。
| イタリアでのガソリン価格
イタリア政府は、Aid bis という援助令で電力・ガス、ガソリン価格高騰の影響を和らげるために520億ユーロ(7兆円を超える)予算を既に組んでいた。
しかし、新年明けすぐ燃料価格が上昇。
2023年のガソリン価格は2022年よりも1リットルあたり20セント高くなった。
2月末まで間接税を引き下げるという政府の決定は有効だったが、年末に割引が終了し物品税が通常に戻ったためである。
1バレルあたりの価格も更新され2023年は微増で始まった。
政府の打ち出した臨時の政策では、物品税の引き下げは2022年末までで法令は失効し、それが2023年に延長されなかったため、2023年1月1日から2回目の物品税の引き上げが始まったのだ。
その結果、昨年の7月末の水準に戻ってしまった。
例えば中型車30リットルのガソリンを満タンにすると昨年よりも約6ユーロ(842円)多く出費が嵩むということになる。
これを年間で計算すると、1 家族あたり合計+366ユーロ(約5万円の増)に達すると消費者調査団体のcodaconsが見積もりを出した。
セルフサービス モードでのガソリンの全国平均価格は1リットル1.806 ユーロ(252円)、ディーゼル セルフの平均価格は 1.867 ユーロ(262円)だ。
| EUの労働問題
2022年12月のユーロ圏の季節調整済み失業率は6.6% で、11月の6.1%と比べて安定していたとユーロスタットが報告している。
イタリアの失業率も安定しており、11月と同様に推定7.8%。
最も高い失業率レベルは、スペインの13.1%とギリシャ11.6%である。
逆に、チェコ共和国 2.3%、ドイツとポーランドは失業率が2.9%と低い。
著者プロフィール
- ヴィズマーラ恵子
イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie