イタリア事情斜め読み
イタリアの違法雇用の実態、内務省移民局長の妻が関与の大事件
12月10日、フォッジア州での違法雇用に対する警察の調査で電撃的なニュースが走った。
フォッジャ検察官と軍警察カラビニエーリによる違法雇用に対する捜査対象として16人が検挙された。
調査の結果、12月9日(木)から12月10日(金)の夜に5人が逮捕され、2人の移民は刑務所へ、3人は自宅軟禁となった。移民局長の妻ビシェリアを含む11人も逃亡や罪証を隠滅するおそれがないため自宅軟禁となり、司法警察労働の不法な仲介と搾取の罪で書類送検された。警察の抜き打ち一斉捜査が入ったことを知った労働者4人は逃走した。
なんと、その中に内務省の市民自由および移民局の責任者、移民局長であるミケーレ・ディ・バーリの妻がいたのだ。
ミケーレ・ディ・バーリは、コンテ政権の副首相兼内務大臣のサルヴィーニが選出し2019年4月から市民自由および移民局長のポストに就任していた人物である。
レッジョディカラブリアの元知事でもあるミケーレ・ディ・バーリは、2010年にフリウリベネチアジュリア地域の副政府長官に任命され、2012年以降、ビーボバレンティアの知事としてのキャリアを積み始め、次に2013年から2016年までモデナの知事、フォッジャ県では内閣長と副知事を務めた。彼は実にさまざまな役職を歴任している。
近年、彼はダウニの首都とマンフレドニアの間の違法な入植地である旧ボルゴメッツァノーネトラックの開拓と復旧プロジェクトである「おもてなしの城塞」に取り組んでいた。
今回、この違法雇用の調査で妻のロサルバ・リブレリオ・ビシェリアが関与していることが明るみになり、それを受けて内務省の移民局長は辞職願を提出、内務大臣のルチアナ・ラムジュが受理して、ミケーレ・ディ・バーリ移民局長は辞任したと内務省によって発表されたのである。
ディ・バーリ元移民局長は、報道陣からの質問には「合法性を尊重して常に行動してきたつもりだ。大変残念に思う。私の妻は、私と一緒に、違法行為ではなかったと完璧な自信を持っており、争われている事実に対する事件とは無関係であると確信しています。」と応えた。
2020年7月から10月までの期間に焦点を当てた調査だったが、その過程で、違法雇用(カポララート)の運営に関与した一部の人々に起因する10の農場が一斉捜査された。
伍長が調達してきた労働力を搾取したとして告訴されたフォッジャ地域の10の農場、その管理マネージングパートナーが移民局長の妻ビシェリアであったのだ。
移民局長の妻が移民を不法労働させていたのだから、前代未聞の事件である。
※違法労働(カポララート)について
| 操作の詳細
マンフレドニアの一部であるボルゴメザノーネの町のスラム街に住むアフリカ人約2,000人を非EU労働者として搾取され違法に働かせていた。
ボルゴメッツァノーネに住む移民から12人の黒人労働者が採用され、この地域の畑で働くために送られた。
一部のガンビア市民労働者は、現場作業を指揮する「伍長」に1日5ユーロの賄賂を支払わなければならなかった。
| 労働者の募集をしていた仲介役
セネガルとガンビアの2人の非EU市民が地元の起業家との仲介役を務めていた。
ボルゴメッツァノーネから集められたアフリカ人は、まざまな土地の農場へ送られ割ふられ送られた。まず、労働場所までの輸送料金として1人5ユーロ(約640円相当)、さらに仕事を見つけてあげた見返りとして仲介手数料の5ユーロを移民に請求していた。
労働場所ではこの2人が、労働者に指示を与えて監視する役もしていた。
仲介役の2人から供給された労働者達は皆、雇用契約は無し、適切な安全対策は無し、トレーニングや実践期間など適切な期間や手段など無し、劣悪な環境下ですぐさま働くことを余儀なくされていたのだ。
調査では、移民局長の妻にいたっては"募集と搾取のモダリティ"を完全に把握しており、搾取を組織化する運用能力は高レベルであることが明らかになった。
また、コンプライアンスに対する一定の不浸透性も明らかになっている。
行為が多数の労働者に対して長期間にわたって行われたことに留意している
こういった労働者の募集と仲介者、伍長、農場所有者、企業のパートナーの存在と現場で働くために必要な労働力の特定からその採用、支払い方法まで完璧にシステム化されており、それは常習化されていた事実が明るみとなった。
| 違法な低賃金での奴隷労働
フォッジャ州の定期農業労働者の賃金水準だけでなく、全国労働契約によって確立されたものとは明らかに異なる低賃金。
実際、給与明細は、休憩やその他の休暇日数を考慮せずに、実際に労働者が支払った日数よりも少ない労働日数を示していたため、真実ではないことが判明した。
とりわけ、労働者は計画された健康診断さえ受けていなかった。
フォッジャ裁判所の調査裁判官はまた、予防措置の影響を受けた被験者のうちの10人に起因する10の農場は管理改善を命じた。
調査員によると、関与した企業の売上高は約500万ユーロ(約6億4千万円相当)あった。
違法雇用は、刑法第603条の2で規定されている明らかな犯罪である。
労働協約で規定されている賃金よりも低い賃金であったり、実行される仕事の量と質に不釣り合いな賃金である場合は雇用主は罰せられる。
内務省の管轄である移民局を取り仕切っていた長官の辞任にまで影響を及ぼしているこの論争は、イタリアの移民問題の核心をついている。辞任したことで、イタリアの農業部門で雇用されている何千人もの労働者と違法雇用の犠牲者の状況が全て隠蔽されてしまう危険性がある。
リーガ(北部)同盟の党首マッテオ・サルヴィーニは、「違法な不法移民の上陸は2倍になり、過去2年間で10万人がイタリアに到着したと言われている。そして今日、入国管理局長の辞任があった。内務省の災害、大臣は直ちに議会に報告する必要がある。」と述べている。
National Labor Inspectorateのレポートによると、2019年上半期の6か月で、263人が労働者の雇用と搾取で報告され、59人が逮捕された。2018年の同時期の80人の搾取された労働者数の3倍以上である。農業部門では147件の苦情があり、違法労働者は+ 7、7%に達した。 (2018年の77,222人から2019年は83,191人へ)。申告されていない闇の仕事は14%増加し(20,398件から23,300件へ)、不規則な契約形態や搾取された労働者の数は2倍になり、5,161人から10,454人へと倍増。
2020年のレポートでは、違法雇用の犠牲者は約18万人であると推定されている。また、エウロピアン・ハウス・アンブロセッティ研究センターによれば、州の税収の不足が25歳までの労働者に支払われる賃金に関して6億ユーロに達する。
そして12時間努力の報酬金が1日あたりたった30ユーロ(約3,840円)の支払いしかされていないという。
このイタリアの闇、違法労働に関与していた内務省移民局のトップの妻が関与していたという事態、イタリアの同胞(FdI)は任命責任を追及する考えを示し内務大臣ラムジュの辞任を求めている。
著者プロフィール
- ヴィズマーラ恵子
イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie