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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアの医療アクセス問題

画像:Pixabay_steinchen

医療へのアクセスが時として困難となる問題は長年続いているこの国の課題です。先日、病院から数分の距離に住んでいる人が、救急車を待っている間に亡くなりました。緊急要請を受けた救急車が現場に到着するまでに20分以上かかったのです。

また、数日前にはゴールドコーストの病院で、救急車で運ばれてきた患者が病院で担架の上で待っている間に亡くなるという事件が発生しました。オーストラリアの病院では、救急車が患者を病院に下ろせない「ランピング」という問題が続いています。オーストラリアの公立病院の場合、地域によって救急車が輸送する病院がほぼ決まっています。日本のように、救急車の輸送先が決まらずにたらい回しになることはありませんが、病院に到着してから待たされることがあります。

オーストラリアでは、救急車で病院に行こうと自家用車で行こうと、待ち時間はトリアージによって決まります。最も緊急とされるカテゴリー1の場合、救急車から救急部門に連絡が行き、即座に処置室に直行します。しかし、それ以外の場合、救急車が病院に到着しても救急のベッドが空くまで患者は担架の上で待たなければなりません。病院内で担架を置く場所がない場合、救急車の中で待つことになります。救急隊員は病院に到着しても、患者を救急のスタッフに引き渡すまで病院を離れることができません。救急に患者を収容するベッドがない場合、救急車は病院を離れることができず、これがランピングにつながります。

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画像:Pixabay_fernandozhiminaicela

救急が混雑するのは、患者がGP(家庭医)にかかれないからだという意見もあります。場所によってはGPの予約が数週間取れないため、救急に行くしか手段がないという患者も出てきます。また、多くのGPクリニックが患者の自己負担額を増やしているため、経済的にGPに行けない患者が増えているという現実もあります。

政府は、GPにかかれずに救急に行く患者を減らすため、予約なしで利用できるUrgent Careクリニックを開設する計画を進めています。これらのクリニックは、心臓発作などの重症患者は診ませんが、風邪や軽症のけがなどを診療対象としています。

オーストラリアの医師会や家庭医学会などは、Urgent Careクリニックが増えても救急のランピング問題は解決しないだろうと考えています。救急のベッドが足りないのは、一般病棟のベッドが空かないためです。救急から患者を移すためのベッドがないため、救急のベッドが空かないのです。一般病棟のベッドが足りていないのは、退院した患者が行く施設など不足しているのが主な理由とされています。





参考
https://www.9news.com.au/national/investigation-launched-into-mans-death-while-waiting-for-ambulance/7ea4f2ac-1a66-4ba6-8d03-18ce314712

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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