ドイツの街角から
ホテル備品のお持ち帰り(盗難品)から見えるお国柄 イタリア人はワイングラス、オランダ人はトイレットペーパー、ドイツ人は?
ホテルの備品アメニティやタオルを持ち帰ることは、多くの客にとって些細なことかもしれない。だがそれだけにとどまらず、テレビやピアノ、あるいは洗面台をまるごと持ち帰る強者もいるという。また宿泊ホテルの星の数が多いほど、高価な品が消え失せる現象も。
ウェルネスホテルガイド「ウェルネス・ヘブン」は、最も頻繁に盗まれる、いわゆる宿泊者のお持ち帰り品は何かをホテル経営者や従業員1157人を対象に調査した。
4つ星ホテルと5つ星ホテル宿泊客のお目当て品や価値観が異なること、そして宿泊者の出身国によってお気に入りの盗難品が違うという、分化した姿が浮かび上がった。
1位はタオルにバスローブ
この調査によると、盗難品の1位はタオルとバスローブ。自宅で使うため?それとも次の旅先で使うためかは不明で、続く2位は、ハンガー、ペン、スプーンやフォークなど。だがこうした「普通」の品物だけでなく、どうやって運んだの?と首を傾げてしまう大胆な逃走劇も多く、旺盛な盗難への想像力がうかがえる。
奇妙なお持ち帰り品7点
1) バスルーム備品一式
ベルリンのあるホテルの報告によると、レインシャワーのヘッド、ハイドロマッサージシャワー、便座、排水管、あるいは洗面台をまるごと持ち帰った客が記憶に残っているという。高度な職人技がなせるお持ち帰り品にホテル側も笑うに笑えない。
2) ピアノ
イタリアのホテルマンは「ある時、ロビーを歩いていたら、何かが足りないことに気がつきました。そこで同僚に聞いてみると、作業服らしきオーバーオールを着た見知らぬ3人組が大きなピアノを持ち去ったというではありませんか。修理だったのかな?と思いましたが、それっきり。盗難者とピアノは消え去り、戻ってきませんでした」と振り返る。
3) ステレオ音響器具
ドイツのホテルオーナーはある朝、ウェルネスエリアのステレオ音響器具がすべて消えてしまったことに気がつき、目を疑った。お持ち帰り客は一晩で音響機器を全て解体し、自分へのプレゼントとして車に積み込んで立ち去ったようだ。
4) 部屋番号
イギリスのあるホテルで、宿泊客がホテルの部屋のドアに貼ってあった数字を無造作に剥がし持ち帰った。「次の客が部屋を見つけられなくなって初めて気づいたんです」とホテルの支配人は言う。これを読んだ時は「そんなバカな!」と大笑いしてしまった私だが、ホテル側にとってはいい迷惑。
5) 剥製
フランスではイノシシ頭部の剥製を盗もうとした宿泊客が報告されている。あわや盗難を阻止したが、盗難未遂で警察沙汰に。その後、友人達がホテルからその剥製を買い取り、結婚祝いにプレゼントしたという落ちも。新郎は、ウィットに富んだ友達の贈り物にどう反応したのだろうか。
6) ディナー用食器類一式
ある高級ホテルの常連客は、レストランから皿、グラス、カトラリー(食用ナイフやフォーク、スプーン)など、ディナー用食器類を繰り返し盗んでいた。しかも数カ月にわたって定期的に。
常連客ならそれなりにお金の余裕があるのではと思う。だったらホテルに交渉して有料で譲り分けてもらう方法もあったはずなのにと考えるのは、私だけだろうか。
盗難よりも自宅に持ち帰るスリリングな気分にはまったのかもしれない。あるいは自宅でホテルのレストランにいるような気分で食事をしたいのか。確かに皿が素敵だと料理も一層美味しそうに映えるが、自宅ではだれが料理するの?と、どうでもいいことを案じてしまう。それとも食器棚に収め、ニンマリと眺めているのかも。
7) 生花
モルディブのリゾートホテル経営者によると、デコレーション用の生花が頻繁に消え失せるそうだ。そのため毎週数回、生花を注文する羽目に。モルディブといえば、新婚カップルや恋人たちの憧れの旅行先。花嫁へのプレゼントに、あるいは現地でプロポーズをする恋人たちに人気の盗品が花という訳だ。
国別に見た盗難品の違いとは
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko