ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々
俳優養成所を立ち上げてからのトラブルだらけの日々
皆さんこんにちはミャンマーから新町がお届けしております。
今回の記事は前回の続きになりますので、読まれていない方はそちらからお読みください。
ミャンマーの芸能界への最初のアプローチ
さて、意気揚々と俳優養成上を開設したのは良かったのですが、そこからは日々トラブルとその解決に頭を捻り続ける日々と言った感じでした。
先に結果をお伝えしておくと、事業的には失敗でした。
ある程度の赤字は覚悟していたのですが、そもそもの目的であったスター芸能人を育てるというような事からは程遠いようなところでずっとあくせくしていたように思います。
今回の記事では実際に起こった事やその対処についてを書きたいと思っていますが、これだけは先に伝えておこうと思います。
失敗の一番の原因は私にあります。
それだけは間違いありません。
様々なトラブルに原因はありますが、私は~のせいでうまくいかなかったということを強調したい訳ではなく、あくまで起こった事実とその時思った事と最終的にどうやって方向修正していったかというような事が読んでいただく皆さんの参考になれば良いなと思っています。
最初に生徒を募集した時、凄く沢山ではありませんでしたが、それなりに生徒は集まりました。
これから俳優を目指す人の為に基礎的な訓練などをする場所になれば充分だと思っていました。
3ヶ月でそのカリキュラムを終え大事なのはその先だと思っていたので、卒業していった生徒たちとどんな事を芸能界に仕掛けていくかなどが出来れば面白いなと思っていました。
俳優としての基礎訓練、芝居の台本読み、実技訓練などを弊社スタジオで行い。
その他現役の役者や監督さんなどの講演や現場への見学など、様々な事を行いました。
真面目にカリュキュラムをこなしてもらい、特別授業などを受けていってもらえれば俳優の卵たちには良い経験になるだろう、そしてやる気のある子たちは卒業後に弊社に専属で所属してもらったりといった事が出来るんではないか。
そんな風に考えていたのですが、私が考えていた、俳優を夢見る新人たちと集まった生徒たちにはかなりの認識の違いがありました。
ミャンマーだからというのもあるとは思いますが、養成所からスターを出すという事がどれだけ難しい事かということを思い知らされることとなります。
ここでいくつか養成所を運営していく上で起こったトラブルをお伝えしようと思います。
ある時、養成所の運営の責任者を任せていた女性マネージャーから知り合いの監督さんの撮影現場に生徒たちと見学に行く。
その監督さんに私を紹介したいので一緒に来てくれないかと言われ、勿論と現場に向かいました。
全ての生徒たちを連れていくという事ではなく、そのマネージャーが特に目をかけている子を連れていくということで生徒は3人くらいだったと思う。
その中でも特に頑張っている女の子がいるということで私も改めて紹介された。
10代後半だったか、20代前半だったか。
凄く綺麗とかオーラがあるという事は私にはわからなかったが、元女優のマネージャーが言うのだから将来有望なのだろうと思っていた。
現場で監督さんにも紹介してもらった。
監督さんは日本人がミャンマーの芸能界の発展の為に頑張ってくれるのはうれしいといういうことを言ってくれた。
是非これからいろいろとやっていきたいと声をかけてくれました。
なるほど、こんな風にして芸能界とつながっていくのかと感心したものです。
その辺りは本当にミャンマー人のスタッフに教えてもらいました。
そして勿論先ほどの女優の卵である女の子も監督に紹介していました。
いわゆる売り込みというもの。
小さな役でも良いので使ってあげてください、などと営業していたようでした。
養成所は始まったばかりだが、早くもミャンマー芸能界へのアプローチを始める事が出来たことに私は満足していました。
これは良い流れだなと。
最初の子たちが卒業するまでは大きな動きは起こらないかと思っていたが、もしかするとそれまでにも何かあるのではないかと期待してしまうような流れと感じていました。
ですが、
事件はそれからすぐ起こります。
最も事件だと思ったのは恐らく私だけで、そんな事は日常茶飯事といったことだったのかもしれません。
ある時、オフィスの隣の養成所があるスタジオへ授業の様子を見にいこうと出掛けた時でした。
その時は舞台での立稽古していたのですが、授業を受けている中に例の女の子がいません。
今日は休みなのかなと、特に深く考えてはいなかったのですが、現場見学に行った時の監督さんから、今度養成所の方にも遊びに行かせてくださいというような連絡が来ていたのでそれも合わせて授業が終わった後にマネージャーに話をしました。
「今度監督さんが遊びに来てくれるらしいよ。ところで例の子は今日休みなの?」
「彼女辞めました」
「なんで?!」
「駆け落ちしたみたいです」
「何それ?!」
衝撃的な展開でした。
駆け落ちってそんなライトに起こるものだっけ?
21世紀ってそんな時代?
ミャンマーではよくあるの?
色々んな事が思い浮かぶのですが、まずはこの質問が思い浮かびました。
「そもそもどうやって駆け落ちだってわかったの?」
「彼女がFacebookに投稿していたのを観ました」
その日二度目の衝撃来ました。
駆け落ちってSNSに書き込むような事なんだっけ?
よくよく話を聞いてみると彼女と急に連絡が取れなくなったのでおかしいなと思っているとある日突然Facebookに彼と駆け落ちする旨が投稿されていたそうです。
もはや私にはその相手がどんな人なのかとか、どこまで本気でやっているのかなどを問う気もおこりませんでした。
わざわざ撮影現場にまでお邪魔して、監督さんに紹介したのはいったいどうなるんだろう?
こんなことは信用問題に関わる事だと思ったのですが、実際監督さんが養成所に遊びに来た時には特にそのような話にはなりませんでした。
マネージャーからうまく伝えてくれたのかもしれませんが、今思えばそんなことはミャンマーではきっとよくあることだったのだと思います。
それくらい一々気にしていてもしょうがないといったことなのでしょう。
私は決して安くない授業料を払って、そのカリキュラムも消化せず、ましてやそんなことまでしでかしてどのツラ下げて再び芸能界を目指すのだろうか?
いやそもそももう芸能界には何の未練もないんだろうか?
とにかく理解不能でした。
未来を夢見て頑張る新人が沢山集まるのは所詮私の妄想でした。
一筋縄ではいかない俳優養成所の運営での苦難は始まったばかりでした。
つづく
著者プロフィール
- 新町智哉
映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。
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