パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
パリオリンピックの思わぬ影響 住民のパリ脱出と観光客減少
そもそも、オリンピックがなくても、夏休みになるとパリの住民は太陽を求めてバカンスに出かけ、7月から8月にかけては、パリはなんとなく人が減って、ス~ッとした感じになるのは、毎年のことです。それでも、その隙間を埋めるかのようにいわゆるパリ市内の観光地的な場所には、国内、海外からの観光客がやってきます。
そんなバカンスモードのパリの人口動態?のバランスが今年はオリンピックによって崩れつつあるようです。フランス政府をはじめ、フランス観光客は、当然、オリンピックのために、例年よりも大幅な観光客増加とパリ及びパリ近郊の住民がオリンピックのためにパリに留まることを予想していたようですが、これまでの調査、そして7月・8月の航空券やホテルの予約状況を見ると、思っていたほどには、増加せず、特にパリジャン・パリジェンヌはいつも以上にパリを脱出する計画を立てている人が多く、また例年、オリンピックがない年には、バカンス先にパリを選ぶ海外からの観光客もパリを避けているという予想外の現象があらわれ始めているようです。
パリジャン・パリジェンヌがパリを脱出する理由
そもそも、バカンスを何よりも尊ぶフランス人にとって夏休みにバカンスに出かけるのは、ごくごく普通のことではありますが、今年は、特に春先から初夏にかけて、パリ近郊では悪天候が続いており、気温も低く、雨の日も多く、例年よりも太陽を求めて、南へ行きたいという気持ちが大きいのもパリ住民のパリ脱出計画に拍車をかけている気がします。それを裏付けるかのように、コートダジュールやコルシカ島などの予約状況をみると、昨年に比べて、それぞれ11.3%、7.7%も増加しており、パリの住民はオリンピックよりも太陽を求めていることがわかります。
それに加えて、オリンピック期間中の警備のための様々な規制、オリンピック期間の前後の交通規制、リモートワーク推奨、宅配回避要請などの数々の不便を強いられる状況には、ウンザリするのもムリはないし、特に高いチケットを買ってオリンピック競技を見に行きたいというわけでなければ、特にパリに留まる必要もないわけです。各オリンピックの競技にしても、セーヌ川を利用した壮大な計画の開会式のパレードにしても、結局はテレビなどで見るのが一番よく見れるというのは、よくあることで、それなりの盛り上がりは見せるであろうものの、フランス人にとったら、オリンピックよりも自分たちのバカンスが優先でバカンスほどにオリンピックは魅力的な存在ではないということが数字で表れ始めているのかもしれません。
海外からの観光客まで減少
いよいよ、今年はパリでオリンピック開催!という今年の初めに、マクロン大統領は、今年はフランスの年間観光客1億人を目指すと豪語していましたが、それは当然、オリンピックのために、あるいは、オリンピックに乗じて観光客が増加することを見込んでいたと思われます。むしろ、昨年の夏の段階では、来年のオリンピック時には、パリのホテルは予約が取れなくなる!などというムードが高まり始め、軒並みパリ及び、パリ近郊のホテルの価格が爆上がりし、平均通常の6倍以上になっているなどと報道されていました。これには、パリ観光局等のメスが入り、あまりの法外な値上げを取り締まったりもしていましたが、酷いところでは、パリ15区のホテルで通常一泊90ユーロ程度の料金のホテルが1,363ユーロに値上げしているホテルなどもあったようです。
宿泊施設だけでなく、パリの交通機関などもオリンピックの少し前の7月20日から9月8日までの間は、メトロ・バスのチケットなども1枚 2.15ユーロから4ユーロ、10枚綴りのカルネで17.35ユーロから32ユーロへと大幅値上げと、かなりえげつない値上げです。それに加えてエッフェル塔などの入場料なども便乗値上げともとれる大幅な値上げをしています。RATP(パリ交通公団)などにしてみれば、パリオリンピックのために、様々な路線延長や改装工事を行ってきたので、少しでもそれを回収したいのは、わからないでもありませんが、観光客にとっては、この期間でなければ、もっと経済的に、しかもスムーズにパリを観光できるとなれば、この時期を避けるのは、当然のことでもあります。
そのうえ、そうはいっても、オリンピック期間中は、当然、相当な混雑も予想され、公共交通機関だけでなく、通行制限される場所なども多々あるために、パリの住民でさえも、パリ市内を移動するのは、結構、厄介と思われるところを観光客が自由自在に動きまわるのは、おそらく、かなりハードルが高いのでは?と思ってしまいます。
そのうえ、テロに対する警戒心も観光客にとっては大きいもので、オリンピックだからこそ、よりテロに対する警戒心が高まっているというオリンピックが観光客にとっては逆に作用している面もあるようです。
オリンピック効果での観光促進は目論見はずれだった?
パリでオリンピックを開催するにあたっては、全世界の注目が集まることから、フランスへの観光事業促進も充分に目論見のひとつにあったと思われ、オリンピック聖火リレーもすでにフランス各地を回り始めていますが、その各地でその土地の魅力をアピールしながら、開会式にはパリに到着するというシナリオが進んではいるものの、とりあえずこの聖火リレーについては、マルセイユに聖火が到着したときは、かなりの盛り上がりを見せたものの、その後は、ほとんどスルーに近い状況で、しかもフランス国内に関して言えば、もう現在はハッキリ言って、オリンピックよりも国民議会解散、選挙が何よりも国民の関心事で、その結果如何によっては、暴動でも起こるのではないか?とさえ、案じられています。
この観光客減少の兆しは、すでに5月後半から6月にかけての観光客数 7.3%減少、これまでに入っている夏季の国際線の到着数は2023年と比較して 3.8%減少しているという想像外の結果が出ています。もっとも、オリンピックの中間期間(8月12日から27日まで)は、さすがに 9.8%増加していますが、全体的には、例年よりも減少しているというのは、大きな目論見はずれで、現在のところはなんとも皮肉な結果としかいいようがありません。
そもそもオリンピックという国際的なイベントが以前よりも、注目度が下がっているコスパの悪いイベントになりつつあるような気もするのです。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR