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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

東京オリンピック聖火リレーの報道1分でスルーのフランス オリンピックをやるなら相当な覚悟を!

それどころではないフランスでは、オリンピックにスポットライトはあたらない   pixabay

開催まで半年を切った今なお、こんなに注目されないオリンピックがあるだろうか?と思います。フランスでは、昨年、東京オリンピックの延期が決まった時に、少しその報道がなされたのみで、その後もほとんど、オリンピックについての報道はなされておらず、オリンピック関連のニュースは、ほじくり返せば、多少は出てくる程度で、話題にも上がりませんでした。

当然です。フランスは、(世界は)オリンピックどころではないのです。先日、福島で聖火リレーがスタートした時だけ、メインのテレビチャンネルのニュースの終わり1分程度で、聖火リレーのスタートを報道していましたが、それもほんの僅か、聖火リレーがスタートしたという事実だけを伝えたニュースが流されたものの、ほとんどスルー状態です。

聖火リレーがスタートしたニュースの内容

「東京オリンピック・聖火リレーが福島でスタート、ローズゴールドのこのメタリックなタッチは、希望の光を象徴しています。10年前、マグニチュード9の大地震が巨大な津波を引き起こし、約2万人の死亡者と甚大な被害をもたらした福島の地から、復興の証として聖火リレーはスタートしました。このスタートは、東京オリンピック開幕までの4ヶ月のカウントダウンの始まりを示しており、東京に到着するまでに1万人近くのランナーが国の47都道府県を走ります。しかし、パンデミックの中、組織されたこの大会は、1年間延期された上に、聖火リレーでさえも観客不在で行われています。日本はこれまでにコロナウィルスによる死亡者は9000人未満、しかし、東京は、今週の水曜日に今月最高の1日420件の症例を報告しています。」

また、世界のニュースをピックアップして伝えているフランスで人気のYouTuberのユーゴ HugoDécrypte(https://www.youtube.com/results?search_query=hugodecrypte) のチャンネルでは、「コロナウィルスに打ち勝った証としての大会のはずが、パンデミックは今も続いている」と説明、日本での世論調査をもとに、今もなお、日本人の36%が2024年にオリンピックを延期してほしい、33%が中止してほしいと希望していること、また、日本はすでに現段階で、オリンピックに関わる20億ユーロの赤字を出していることを伝えています。

どちらにしても、ニュースは事実を伝えているのみで、オリンピックをやるべきか、やめるべきかという議論にまでは大きく発展せず、見事に人々の関心時から外れています。聖火リレーのバトンが希望の炎を象徴していると言われても、今、現在も家から救急車のサイレンが5分と途切れることなく聞こえ続けるコロナウィルスに喘ぎ苦しんでいるフランス(現在、1日の新規感染者数4万人〜4万5千人)に住んでいる身としては、日本人でありながら、この映像には、どこか空々しさを感じずには、いられず、人々の関心を引かないのも当然です。人の関心を引かないことはニュースにならないのも当たり前です。

もっとも、フランス人の関心事から逸れて、ロクにニュースにも取り上げられないことは、この深刻なパンデミックの最中にオリンピックを強行しようとする日本へのバッシングの議論を避けられているだけでも、幸いなことかもしれません。

それでもオリンピックをやるなら余程の覚悟がいる

聖火リレーをスタートさせた今でさえ、世界中があまり、オリンピックに関心がなく、しかも、本当に開催されるかどうか、半信半疑の状態ですが、聖火リレーをオリンピック開催へのカウントダウンとしている以上、開催への道を進んでいると思うと、オリンピック後の世界の、特に日本の状態を懸念しないではいられません。

日本は日本で、コロナウィルスの感染拡大は深刻で、被害もそれなりに広がってはいるものの、アメリカやヨーロッパのそれとは、比較にならないほど、日本は、奇跡的に感染を抑えられています。現在は、日本への入国は、日本人でさえも相当に厳しい措置が取られているため、日本へ行こうとしている人も極めて少ない状況ですが、いくら無観客の大会となろうとも、選手団、マスコミ等が世界から集まるとなると、相当な外国人が日本へ入国します。

欧米という言い方は好きではありませんが、敢えて言わせてもらえば、欧米人の衛生観念は、全く日本人のそれとは、違います。世界中がパンデミックに震え上がっている中、日本が奇跡的に感染を抑えられているのは、日本人の極めて世界的にトップレベルな衛生観念であり、その生活習慣に基づいていることは言うまでもありません。私は、ここ20年以上、フランスで生活していますが、少なくともフランス人の衛生観念を舐めてはいけません。現在のコロナウィルス対策が敷かれている状況でさえも、日本のコロナ前の日常と大して変わらないのではないか?と思うほどです。彼らは、ちょっとでも気を抜けば、たちまち土足で家に出入りし、平気で地べたに座り込み、手もろくに洗わず、マスクをしても鼻を出し、政府が「一度使ったティッシュは二度以上使わずに捨てましょう!」と呼びかけなければならない国民なのです。

日本がどんな感染対策を敷こうとも、オリンピック競技大会のように、どうしても興奮しがちな状況に置いて、彼らが四六時中、お行儀よく振る舞うとは、到底、思えないのです。そんな場と機会におかれて、コレまで日本が守り続けてきた感染の壁を世界中から集まる人々に一気に打ち破られ、また、彼ら自身も新たに感染を世界各国に持ち帰るのではないかと不安でなりません。

現在は、頼みの綱であるワクチン接種に関しても、一部の国を除いては、思うように進んではおらず、フランスも特にオリンピック関係者に優先的にワクチン接種をすることはしないとしています。日本はワクチン接種に関しては、かなり慎重でゆっくりしていますが、日本の感染のスピードを考えれば、これまでは、日本はワクチン接種をそれほど急ぐこともないのかな?と思ってきましたが、オリンピックとなれば、話は別です。

フランスは、現在の状況を見る限り、昨年の第1波のロックダウン解除(5月半ば)のタイミング以上に感染がおさまるのは、昨年よりも、ずっと規制も緩く、人々の緊張の糸も切れかかっているために、ずっと時間がかかるでしょう。昨年の状況を見る限り、ウィルスは気候の影響を受けるため、夏の間は、比較的、感染が広まりにくいことがわかっていますが、フランスでは、昨年、感染が一度、夏前におさまりかけたのを良いことに、皆が夏のバカンスに出かけて、結局、おさまりきらなかったウィルスが秋には再び爆発しました。フランスは、夏の終わりまでに全ての国民にワクチン接種を終わらせることを発表していますが予定どおりに行くでしょうか?

少なくともフランスは、まだやるかやらないかもはっきりしていないオリンピックの参加如何を協議するほどの余裕はなく、集中治療室をどうやって確保するか?それでも間に合わない患者をどうやって他の地域に移送するか?なかなか届かないワクチンをどうするのか?ロックダウンせずにこの危機を乗り越えるには、どうするべきなのか? 

全くもって、オリンピックどころではないのです。

※3月28日0時42分に公開された本記事にて、「カナダのオリンピック委員会(COC)は22日、今年の夏開催の東京五輪には、選手団を派遣しないことを表明しました。」という誤った情報の記載がございました。読者の皆さまにお詫び申し上げますと共に当該箇所を削除致しました。なおカナダのオリンピック委員会は、海外からの観客受け入れ断念を決定した組織委の取り組みを支持するという声明を発表しています。(2021年3月28日17時35分)

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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