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スタートアップ超大国 インド~ベンガルールからの現地ブログ~

永田賢|インド

[備忘録]日印国交樹立70周年に向けた2国間関係のおさらい

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日本から離れて外地にいると、2国間関係の変遷や関係性の整理をすることが多々あるのですが、「2022年」はインド・日本にとって特別な年となりそうです。

外務省ホームページ:主な周年事業 2021年以降|外務省 (mofa.go.jp) を参照すると、2022年は日印国交樹立70周年の節目の年となります。

節目の年が近いということで、今回の記事では今までの日印関係の変遷をまとめてみます。

パッと見てみると、同じ価値観(文化、宗教、民主主義)を共有したパートナーであり、政治経済・安全保障・文化交流で密な体制を築き、地域(インド太平洋)貢献を成し遂げていこう!という姿勢が根幹にあるのではないかと推察されます。

1.森総理~安倍総理までの流れ:特別戦略的グローバル・パートナーシップへの昇華

大雑把な流れではありますが、以下の変遷を経て、日本とインドの関係性はアメリカ合衆国のそれに比肩するレベルにまで昇華していったと考えられます。

森総理:日印グローバルパートナーシップ構想

日印両国関係は、冷戦の終結、経済のグローバル化といった、新たな国際情勢の中で益々重要になってきております。私が、六月下旬に総選挙を終え、最初の外国訪問先をこの南西アジアに決めましたのも、貴国との間で、幅広い、厚みのある、未来志向の両国関係を築き、地球規模の平和と安定の担い手として人類社会に貢献していくために、「21世紀における日印グローバル・パートナーシップ」を構築したい、との思いからであります。

引用元:森総理大臣演説 (mofa.go.jp)より

森総理のインド訪問時に握った日印グローバルパートナーシップ構想が小泉総理時代に強化され両国首脳部の交流が促進されるシャトル外交の基本形が形成されていったようです。

小泉総理:日印共同宣言

(中略)多面的な協力からなるこのパートナーシップが順調に進展してきたことに満足の意を表明し、今後、二国間関係の発展における幅と深みの醸成、及びグローバルな課題への挑戦という二つの柱を中心に、グローバル・パートナーシップを強化していく決意を表明した。

 日印両国は、民主主義及び市場経済という理念、寛容の精神、多様性の受容、そしてお互いの文明・文化の特質を引き出し合うことのできる智恵を共有する。この展望のもとに、両国首脳は、21世紀におけるアジア及び世界の安定と繁栄に貢献するために、協力を強化していく共通の決意を表明した。

[二国間関係]

 両国首脳は、地域協力を含め、二国間問題、地域問題、及び国際問題に関して、分野を超えた対話を促進するために、ハイレベルでの定期的な意見交換が必要であるとの認識を新たにした。特に、両国首脳は、適当な多国間会議の場を活用しつつ、原則として年一回の外務大臣間の定期的な意見交換を行うことを確認した。また、両国の国防、経済、及び財務大臣間の交流を更に促進することを確認した。

引用元:日印共同宣言(仮訳) (mofa.go.jp)より

そして、小泉総理の後を受けて、安倍総理(第一次)時代に、「戦略的」の名前が追加され、あらゆる分野での協力が志向されるようになっていきました。

安倍総理(第一次):日印戦略的パートナーシップ

日印間の戦略的グローバル・パートナーシップは、二国間関係、地域的課題、多国間における課題、更には地球規模の課題への一層緊密な政治的、外交的な調整を伴う。また、包括的な経済関係、より強固な防衛関係、一層の技術協力、文化的結びつき、教育分野での連携、人と人の交流の拡大に向けた取組を伴う。このパートナーシップは、両国が、相互補完性と相手国の長所を活用しつつ、二国間関係の大きな潜在性を活かすことを可能にし、更に両国が地域的・国際的な課題に応えるために協力することを可能にするものである

引用元:外務省: 「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」に向けた共同声明(仮訳) (mofa.go.jp)より

この戦略的グローバルパートナーシップの中では、満遍なく、政治・安全保障・経済・国民交流・グローバル課題・地域対策と多岐にわたる内容になっており、この安倍総理(第一次)から首脳が毎年お互いの国を行き来するシャトル外交が実施されるようになっていきました。

更に、安倍総理(第二次)で「特別的」の文言も加わり、アメリカ合衆国に次ぐ重要な2国間関係へと昇華していったのです。

安倍総理(第二次):日印特別的戦略パートナーシップ

ベンガルールのスタートアップエコシステム(日系動向編):JETRO|スタートアップ超大国 インド~ベンガルールからの現地ブログ~|World Voice|ニューズウィーク日本版 (newsweekjapan.jp)でも述べましたが、この特別的戦略パートナーシップが現在の日印関係の親密さをより深化させる根幹となる政策となっています。

以下がヴィジョン面になりますが、上記で示されていた行動指針により具体性や戦略性が増して2国間関係を更なる高みに持って行こうとする意図が見られます。

深淵かつ広範な行動指向のパートナーシップのためのヴィジョン

3 日本及びインド国民は,仏教遺産を含む共通の文化的伝統によって導かれ,民主主義,寛容,多様性及び開かれた社会の理想へのコミットメントを共有した。政治的,経済的,戦略的利益が高いレベルで一致し,アジアにおける最大かつ最古の民主主義国家である,日本とインドは,地域やグローバルな課題のための責任を有し,課題に対応出来るパートナーとしてお互いを認識している。

4 両首脳は,インド太平洋地域及び更に広範な地域において,平和的で,開かれ,公正で,安定した,規則に基づく秩序を実現するための断固としたコミットメントを改めて表明した。日本とインドは,主権及び領土保全の原則,紛争の平和的解決,民主主義,人権,法の支配,開かれた国際貿易体制,航行及び上空飛行の自由を遵守する。両首脳は,2025年に向けてこれらの原則によって支えられたインド太平洋地域の平和,安全保障及び発展のために取り組むことを約束した。

5 両首脳は,安全保障,安定,及び持続可能な発展の分野における現行の課題や新たな課題に対処するために,二国間及びパートナーと,より緊密な調整と効率的な連絡を行う必要性を強調した。両首脳は,他のパートナーとの協力を強化し,インド太平洋地域における連結性を強化するための決意を強調した。日本とインドは,地域経済や安全保障フォーラムを強化し,国連改革,気候変動及びテロを含むグローバルな課題に取り組むための行動を調整するために協働する。

6 両首脳は,より強固な二国間戦略的パートナーシップの要件として,防衛,安全保障,経済及び文化の分野における深淵かつ広範な協力と具体的な行動が求められることを認識する。我々の未来志向のパートナーシップは,先端輸送システム,民生用原子力エネルギー,太陽光発電,宇宙,バイオ技術,レアアース及び先端材料を含め,インフラ,製造業及びハイテク分野における我々の協力を新たなレベルに引き上げる。

7 両首脳は,人物交流や文化交流の重要性を認識し,両国民間の広範かつ多様な関与を深化させるために,研究,観光,青少年交流,及び教育分野の協力のための機会を促進することを決定した。

引用元:日印ヴィジョン2025 特別戦略的グローバル・パートナーシップ|外務省 (mofa.go.jp)より

*安倍総理(第三次)の際に、訪印計画が策定されていましたが、おりしもCOVID19パンデミックにより延期となってしまいました。

Profile

著者プロフィール
永田賢

Sagri Bengaluru Private Limited, Chief Strategy Officer。 大学卒業後、保険会社、人材系ベンチャー、実家の介護事業とキャリアを重ね、2017年7月に、海外でのタフなキャリアパスを求めてYusen Logistics India Pvt. Ltdのベンガルール支店に現地採用社員として着任。 現地での日系企業営業の傍ら、ベンガルールを中心としたスタートアップに魅せられ独自にネットワークを構築。2019年4月から日系アグリテックのSAgri株式会社インド法人立ち上げに参画、2度目のベンガルール赴任中。

Linkedin: https://www.linkedin.com/in/satoshi-nagata-42177948/

Twitter: @osada_ken

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