スペインあれこれつまみ食い
ナショナルデーとピラール祭!10月12日はお祭り騒ぎのスペイン
10月12日、スペインではナショナルデー(またはヒスパニックデー)とピラールの祭礼が祝われる日でした。ナショナルデーを祝う首都マドリードでは軍事パレードが行われ、ピラールの祭礼はアラゴン州のサラゴサにある大聖堂にてそこに祀られる聖母ピラールに花を捧げ盛大にお祝いします。ピラールの祭礼は去年一昨年とコロナウイルスの影響で開催されず、ナショナルデーも一昨年は中止、去年は規模を縮小して行われていたため、どちらもパンデミック以前の状態でお祭が行われるのは2年ぶりでした。
スペイン万歳!ナショナルデー
ナショナルデーはスペインで最も重要な祭日の一つと考えられています。1492年10月12日はクリストファー・コロンブスが新大陸を「発見」した日。この発見がきっかけでスペインだけでなく世界の歴史が大きく動いたのは言うまでもありません。スペインでこの日がナショナルデーとして正式に祝日に定められたのはそれから約500年後の1987年で、この頃から10月12日はスペインの国家にとってとても大切な日となりました。
軍事パレードにはスペインの国王や首相、各州の代表者などが出席し、スペイン人たちはスペインの旗を振って「ビバ・エスパーニャ!(スペイン万歳!)」と歓声を上げるのです。軍事パレードの他にも航空ショーやダンスなどが行われ観客たちを魅了しました。
スペイン人みんながスペイン人であることを誇りに思いお祝いする日・・・と思いきや、私の身の回りにこの日を祝ったりパレードを見にいく人はいませんでした。彼ら曰く、「この日を祝うのは愛国心の強い保守的なスペイン人と観光客だけ」なのだそうです。
Así ha desfilado la mascota de la Legión en el desfile del 12 de octubre en Madrid https://t.co/PCV2Fy8Lwx pic.twitter.com/IjmJgRLLO4
-- EL PAÍS (@el_pais) October 12, 2022
一方「発見された側」の反応は?
私はスペインに来る前に南米のコロンビアに住んでいましたが、コロンビアで出会った多くの人々はこのスペインによる新大陸発見やアメリカ大陸植民地化に対してとてもネガティブな意見を持っていました。彼ら曰くスペイン人は「自分たちの祖先である先住民たちを大量に虐殺してスペインの文化と宗教を押し付けた上にコロンビアの資源を略奪した泥棒」なのだそう。ニカラグアやベネズエラをはじめとする「発見された側」の国々ではこの日を「先住民抵抗の日」としてスペイン人の虐殺から生き残った先住民を称える日とする動きがある様です。
この日も「スペイン万歳!」と歓声が上がっている一方で、マドリードの別の通りではアメリカ大陸出身のメンバーを中心に植民地化を肯定する動きに抗議を唱える行進が行われました。彼らは#10月12日に祝うことは何もない(#12deOctubreNadaQueCelebrar)をスローガンに「この日を祝うことは先住民の大虐殺や略奪を祝っているのと同じだ」と訴え、先住民の民族衣装を見に纏い歌や踊りで平和的に抗議を行っています。
スペインを守る聖母 ピラールの祭礼
ピラールの祭礼は10月12日以前の週末から次の日曜日まで続く大規模なお祭です。ここで祝われるのは聖母ピラール。ピラールが祀られているのはアラゴン州サラゴサ市ですが、ピラールはスペイン全体を守っている聖母とされているため、サラゴサ市に限らずカトリック教を信仰するスペイン人にとってはピラールの祭礼はとても重要と考えられているのです。祭り期間中は早朝からミサやダンス、コンサートなど多くのイベントで盛り上がりますが、この祭り象徴するのはなんと言ってもピラールに捧げられる献花台でしょう。今年は2年ぶりに祭礼が行われたこともあり多くの人々が献花に訪れ、そのお供えの数は歴代最大の30万を超えるほどだったそうです。
2015年スペイン巡礼を予定より早く終えた私は、帰国の日までスペイン国内を転々として過ごすことに決めました。マドリードからバルセロナの間にサラゴサという綺麗な街があるという情報を現地の人に聞き、下調べなしにフラッとバスで訪れたのがこの街でした。当然ピラールの祭礼という行事が行われていることなど知りもしませんでしたが、広場のカテドラルの前にドーンと構える花のタワーに思わず「わー」と声が出てしまったことを覚えています。7年たった今年、いつかまた見たいと夢見ていた献花台を再び見るチャンスだとサラゴサを訪れることを心に決めていましたが、2年ぶりの開催ということで宿はどこも満室。その上、初日から人がごった返しているという噂を耳にして今年は泣く泣く諦めることにしました。もう一度あの感動を味わうために、来年こそはなんとしてでも参加したいと思っています。
著者プロフィール
- 松尾彩香
2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。
Twitter: @maon_maon_maon