イタリアの緑のこころ
イタリアは今年も春に夏時間に、秋には冬時間
イタリアも三寒四温を繰り返し、春に近づいています。日もどんどん長くなり、去年の冬至、12月21日には午後4時36分だった日の入りが、今日、2月25日には午後5時50分になりました。
ペルージャには、冬至以降の日の長さの変化をうまく言い表す、こんなことわざがあります。
"Anno vecchio, passo di un vecchio, anno novo, passo di un bovo"
「旧年には老人の歩み、新年には牛の歩み」
日が長くなっていくその速さが、冬至から年末まではゆっくりで、年が明けると牛の歩みのように勢いがついて速さが増すということで、昔は日々の暮らしの中で、牛がいかに身近な存在であったかということも表しているように思います。
「夕方になっても空が明るい」という感覚は、夏時間に移行すると、さらに強くなります。ちなみに、イタリアでは今年、夏時間への移行は3月26日で、3月25日には午後6時26分である日の入りが、翌日、3月26日には午後7時27日になります。一方、冬時間に戻るのは10月29日です。
イタリアとドイツでは1916年から、欧州連合の全加盟国では2001年から採用された夏時間が、2019年3月の欧州議会の決定で廃止されることとなり、2021年じゅうに全加盟国が夏時間か冬時間かいずれかを選んで、以後はずっとその時間を採用することとされていたのですが、
記事「秋分を過ぎ10月末には冬時間、#イタリア 来春も夏時間が戻るのか」を寄稿。1か月後には冬時間に戻り、今年中に欧州各国は夏時間と冬時間のどちらかを選ぶこととされていますが...
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) October 1, 2021
Newsweek @WorldVoiceJapan
mio articolo: "Tornerà in Italia ancora l'ora legale?"https://t.co/Cu8DAxBCDX
イタリアでは今年も夏時間が採用されるのです。
上の記事に記しているように夏時間の採用で節約できる年間のエネルギー消費量は多く、イタリアではすでに第二次コンテ内閣のときに、従来どおり夏時間と冬時間を交互に採用していきたいと申請していました。
夏時間の採用のおかげでイタリアでは2004年から2021年の間に105億kWh近くものエネルギーを節約し、市民は18億ユーロを節約することができたとのことです。一方で、昨秋には、もし夏時間をずっと採用し続ければ、2023年の間に27億ユーロを節約できるだろうと推定されていました。(参照元はこちらの記事)
2018年9月に欧州委員会が提案した夏時間廃止法案を、2019年3月に欧州議会が可決し、ヨーロッパ連合のすべての国は、2021年じゅうに夏時間か冬時間のいずれかを選択して、以後ずっと採用することとされていました。
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) February 26, 2023
今年2月に書かれた上の記事によると、今では欧州議会が欧州委員会に対して夏時間廃止法案を放棄するように迫っているものの、欧州委員会は夏時間廃止の姿勢を崩さず、各加盟国が夏時間と冬時間のいずれを採用するか決定するのを待ち、態度を保留している状況であるとのことです。けれども、少なくとも上の記事の時点では、夏時間あるいは冬時間を今後採用し続けていくと決めたという通知は、加盟国側から欧州委員会に、まだいっさい届いていないとのことです。というわけで、夏時間廃止は決まってはいるものの、この数年間はまったく動きが見られない状況であるようです。
イタリアでは、ガスの価格の高騰が問題となっていた昨年の秋に、エネルギーを節約するために夏時間を恒久化しようという提案もありました。
A proporlo è la Sima, raccogliendo il favore dei maggiori partiti italiani. Già nel 2018 il Parlamento Europeo aveva invitato gli Stati membri dell'Ue a interrompere la pratica del cambio dell'ora
-- Open (@Open_gol) September 3, 2022
https://t.co/BlAnWCZrF5
その提案について語る上の記事には、イギリスの欧州連合離脱や新型コロナウイルス感染症危機によって、重視されなくなってしまった夏時間あるいは冬時間の選択が、エネルギー危機を機に再び注目されるようになったと書かれています。この記事によると、夏時間から冬時間、冬時間から夏時間に変わってからの数日間には、毎年、心筋梗塞や労働災害、交通事故が増えるとのことで、夏時間を恒久化すれば交通事故の死亡率や犯罪率が減少し、商業活動にもより多くの客が見込めるため有益である一方、12月21日のローマでの日の出が午前8時34分となり、夜明け前の起床は新陳代謝障害や心臓・血管の疾患、不眠症の引き金になり得るとのことです。
けれども、ヨーロッパ同様にイタリアでも、今は様々な解決すべき問題が多いため、この夏時間の恒久化は十分な注目を受けられずにいるのでしょう。記事の冒頭に書かれているように、イタリアでは今年も、春には夏時間に、そして秋には冬時間に移行することと、すでに決まっている模様です。
冒頭の写真は、昨日オルヴィエートで見かけた満開のアーモンドの花です。イタリアも、三寒四温を繰り返しながら、春へと向かっています。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia