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平野美紀|オーストラリア

オーストラリアのビーチが消える日 ─ 海面上昇で約40%の砂浜を失う可能性

シドニーのボンダイ・ビーチを襲う嵐。気候変動で海面上昇が続くとオーストラリア自慢の美しいビーチの大半が消えてしまうかも…(Credit:bjeayes-iStock)

海に囲まれたオーストラリアには、美しいビーチが無数にある。約6万キロメートルの海岸線に沿って、少なくとも12,000のビーチがあると言われ、シドニーだけに限ってみても、入り組んだ海岸線によってできた100以上ものビーチが点在する、まさに「ビーチ天国」だ。(参照

鮮やかな青い海が目の前に広がるサラサラの砂のビーチは、オーストラリアの魅力のひとつでもある。

ところが、そんな自慢のビーチの大半が、気候変動による海面上昇の影響で消えてしまうかもしれないという。

最新の調査によると、オーストラリアは今後80年間でビーチの約40%を失うという衝撃の結果が出された。これは、海岸線が100メートル以上後退することを意味する。

海面上昇の影響で海岸線が変化するのは、オーストラリアだけに限ったことではないが、もしも70cm近く海面が上昇した場合、オーストラリアは1万2,000km以上に渡って影響を受けることになり、地球上で最も多く海岸線の砂地を失うと予測されている。(参照

そんな最悪とも思える予測が現実になるかもしれない事態が、そこまで迫っているのではないかと感じさせる出来事が、シドニー北部で起きた。

気候変動で不動産価格に大きな影響が・・・

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海と一体化したようなラグジュアリーなプールのある豪邸。ビーチ・フロントには、各界のセレブリティも多く暮らしている。(Credit:Supannee_Hickman-iStock)

シドニーの海沿いエリアには、まさにビーチの真ん前に、ホテルかと見紛うような豪邸が建っている。敷地からはビーチへと直接アクセスできる階段が作られ、あたかもプライベート・ビーチのような趣だ。海との間には何の障害物もなく、さぞや素晴らしい眺めだろう。

そんな、唯一無二のロケーションを手に入れるために、富豪が競って不動産を買い求め、海沿いの眺めのいい好条件の物件価格は、ここ20年、天井知らずだ。

しかし、気候変動の影響で海岸線が後退するとしたら、どうなってしまうのだろうか?

9月16日、オーストラリア準備銀行は、気候変動が不動産価格にどのように影響するかについての調査結果を発表。2050年までに一部の海岸沿い地区の不動産は10%以上下落するという予想が立てられた。(参照

それは、気候変動による海面上昇によって海岸線が浸食され、海沿いの住宅は土地そのものの一部が流出する危険性があるからだ。

眺めのいいビーチ・フロントの家は、果たして住むのに最適なのか・・・?

100年に一度の猛烈な嵐で海沿いの宅地が崩落した現実

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2016年6月26日に撮影された写真をみると、被災したビーチに土砂を入れる作業が始まっているのがわかる。(Credit:katacarix-iStock)

5年前、近い将来、それが現実になることを想起させる出来事が、まさに我が地元でもあるシドニー北部のビーチ・エリアで起こった。

2016年6月上旬、オーストラリア南東部を発達した台風並みの低気圧が通過し、猛烈な冬の嵐となった。この嵐がシドニーを襲った時、ちょうど大潮と重なり、高波が押し寄せたことで、ビーチ・フロントの住民に避難指示が出るほどの騒ぎになったのだ。(参照

一時は、最大8メートルの高波が襲い、宅地の一部が崩落。絶え間なく押し寄せる波によって、ぐずぐずと崩れていった。その夜を含む、嵐の数日間は、夜になって辺りが静まり返ると、海からは少し離れている我が家でも大きな波の音が聞こえてくるほどで、その音はまるで雷のような轟音であったことをよく覚えている。避難している住民たちは、さぞや気が気ではなかっただろう。

住民への避難指示がでた翌朝、ドローンを使って上空から撮影された映像は、言葉を失うほど衝撃的なものだった。ビーチ・フロントの豪邸に造られていた海を一望できる大きなプールが、海側へと崩落していた...

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ニューサウスウェールズ大の研究チームによるドローン映像は、世界に衝撃を与えた。動画へのリンクはこちら。(2016年6月撮影:UNSW Water Research Laboratory)

この衝撃映像は、あっという間に世界を駆け巡り、各地で一大ニュースとなったのは言うまでもない。なにせ、同じことが起こりかねないビーチ・フロントの住宅は、この国にはごまんとあり、ハリウッドの有名スターなども多く住んでいるのだから。

この時の嵐は、当初「30年に一度」と言われたが、その後、「100年に一度」と言い換えられるほど、強烈なインパクトと甚大な被害をもたらした。

嵐が去った後、土地の一部が高波にさらわれたビーチ・フロントに建つ約10軒の住宅を守るために盛り土をし、最終的には防波壁を造ることになったが、資金難もあり、まだ完成には至っていない。あれから5年経った今も、ここの住民たちは、土地の浸食と闘っているという。(参照

昨年2月の嵐の時も、大きな波がこのエリアのビーチの砂をさらい、約25メートルに渡って砂浜が浸食されてしまったのだ。(参照

自然の力は、人間の想像をはるかに超えている。自然を舐めてはいけない...と、つくづく思わせる自然災害が身近で起きている現実───

気候変動による海岸線の浸食を研究している博士によれば、海岸部は「自然の変動領域」だという。今後、極端な気候が続き、嵐が頻繁に発生するようになれば、あの時のような破壊的な高波が押し寄せる回数は、今後もっと増えるだろう。そうなると、沿岸部の砂地は完全に波にさらわれ、ビーチが消えてしまう日が、本当に来るのかもしれない。〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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